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金正恩氏、米韓分断狙う 通信復旧で韓国揺さぶり

【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が9月29日の施政演説で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権への揺さぶりを強めた。遮断していた南北の通信回線を10月初めに復旧すると表明し、歩み寄りの姿勢をみせたが、米国との軍事協力を強める韓国の「敵視政策」の見直しを求めた。北朝鮮に対する米韓の姿勢の「分断」を狙う戦術だとみられている。

29日の最高人民会議では、朝鮮労働党副部長の金与正(キム・ヨジョン)氏を国家の重要政策を決める国務委員会の委員にすえる人事も決まった。すでに対韓国工作を積極的に主導しており、名実ともに北朝鮮の対韓政策で影響力を強めるとみられる。

金正恩氏と文大統領は7月、通信回線の復旧で合意した。だが、北朝鮮側は8月の米韓合同軍事演習に反発し、再び遮断を表明した。ここでまた再開を決めた金正恩氏の判断は、今週に入って通信の復旧を呼びかけていた韓国側の希望に応じたものだ。

韓国政府が復旧の働きかけを強めたのは、金与正氏が25日に談話を出した後だった。金与正氏が南北首脳会談を論議できると言及したことを受け、韓国側は北朝鮮側の本気度を見極めようとした。

金正恩氏は29日の演説で、文政権を「米国に追従し、外部の支持を求めることにきゅうきゅうとしている」と批判した。敵対的な姿勢を撤回するよう求め「北南の和解と協力の道へと進むのか、引き続き分裂の苦痛を味わうのか、(文政権は)選択の岐路に立たされている」と決断を迫った。

韓国には北朝鮮に対する「敵視政策」や「不公正な二重の態度」の撤回を求めた。米韓合同軍事演習の中止や、北朝鮮のミサイル開発の容認などを意味するとみられる。

バイデン米政権と対話する可能性について、金正恩氏は29日の演説で関心を示さなかった。米国に対して「我々に対する軍事的脅威と敵視政策は変わっていない」と強い不信感を示した。米側が求める「前提条件なしの対話」を「国際社会を欺き、敵対的行為を隠すための方便にすぎない」と決めつけ、一蹴した。

こうした態度を取る金正恩氏の狙いを、韓国の国家情報院で分析官を務めた国民大の郭吉燮教授は「任期末が近づく文政権の焦りを活用する高度な戦術だ」と分析した。

文氏は2022年5月に任期満了を迎えるが、これまでに北朝鮮との関係改善で大きな成果をあげられていない。韓国を米国から引き離そうと文政権に圧力を加えることは、北朝鮮との交渉に後ろ向きだとみられるバイデン政権を揺さぶることにもつながる。

北朝鮮が今後本格化する韓国大統領選を意識している可能性もある。南北問題が争点となれば、文政権の積極的な融和路線を引き継ごうとする革新勢力と、米韓同盟を重視する保守系野党との対立は一段と浮き彫りとなる。

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