中国、電子部品産業を育成、23年に34兆円規模めざす
米主導の包囲網に対抗

【北京=多部田俊輔】中国政府は29日、電子部品産業の強化計画を発表した。ハイテク分野での対中包囲網づくりを進める米国に対抗するため、中国は半導体の国産化を進めてきた。さらに電子部品にも対象を広げ、自前のハイテク分野のサプライチェーン(供給網)を整備する。
センサーなどの電子部品は日本のものづくりが強みとしてきた分野だけに、日本の産業政策にも影響を与えそうだ。
産業政策を統括する工業情報化省が同日、電子部品産業の「発展行動計画」を、各省や直轄市、自治区に通知した。2023年に電子部品市場を19年の約1.2倍の2兆1千億元(約34兆円)に引き上げ、国内需要に十分対応できる大国の地位を固める。
スマートフォンやドローンなどのスマート端末、高速通信規格「5G」やインターネットを活用した製造業、電気自動車(EV)、ロボット、高速鉄道や航空宇宙などの5分野の電子部品が主な対象で、重要な素材や製造設備も含む。
具体的には、半導体やプリント基板、センサー、磁石、光通信関連部品などを挙げた。部品を製造するのに必要な磁性材料や電池材料、製造設備やソフトウエアも加えた。国際競争力を持つ売上高1600億円以上の電子部品大手を15社作り出すことを狙う。

政策手段としては、特定分野のトップ企業の合併による規模拡大による競争強化を進める。重点工場を決め、工場新設に必要な許認可や金融支援などを集中し、地方政府系ファンドが資金投入する。技術の国際標準の獲得も進めるとしている。
米トランプ前政権時代に米中のハイテク分野の摩擦は先鋭化し、半導体を狙い撃ちされたことから、習近平(シー・ジンピン)指導部は組み立て産業依存からサプライチェーン全体を強化する産業政策に転換した。習指導部はバイデン政権になってもハイテク分野の対立は続くと判断し、米国に依存する半導体などの国産化を進める。
新計画では国際的な連携を強化するともしており、日米欧韓など世界大手の中国での工場や開発拠点の設置を支援するとしている。独自技術を確保しながら、経済成長が続く中国市場での商機をどう拡大するのか。日本勢を含めた世界大手は対応を迫られることになる。