マレーシア首相、外交は経済重視の安全運転を徹底 - 日本経済新聞
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マレーシア首相、外交は経済重視の安全運転を徹底

【シンガポール=中野貴司】マレーシアのアンワル首相は30日、シンガポールを訪問し、リー・シェンロン首相と会談した。2022年11月に首相に就任したアンワル氏は今月、インドネシアやブルネイも訪問しており、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との関係構築を急ぐ。連立政権の基盤が盤石ではないため、外交では周辺国と波風を立てずに安全運転に徹する姿勢が鮮明だ。

アンワル氏はリー氏との会談後、「両国のさらなる関係強化が必要との認識で一致した」と語った。両国政府は首脳会談後、デジタル経済や気候変動問題での連携強化を発表した。デジタル分野では検疫に関する記録などを電子化し、貿易手続きを簡素にするほか、国境を越える電子決済をより効率的かつ安全に実施できるようにする。両国で協力して電気自動車(EV)の充電設備を増やすのに加え、再生可能エネルギー技術の標準化を進め、グリーン経済への移行を加速する。データ保護やサイバー防衛に関する協力の覚書も交わした。

アンワル氏に同行するザフルル国際貿易・産業相は首脳会談に先立つ29日、シンガポールのネット通販最大手シーの本社を訪問。マレーシアでの大型物流施設などの新設と2千人の新規雇用の約束を取りつけた。アンワル氏の最初の外遊先となったインドネシアでも同国の新首都「ヌサンタラ」への経済協力を協議しており、経済分野での実利を追求する姿勢が一貫している。

アンワル氏が経済重視の外交を繰り広げるのは、国内の政治安定が喫緊の課題で、外交で摩擦が生じた場合に対処する余裕がないからだ。アンワル政権は政策や支持母体が異なる複数の政党から成る連立政権で、主要政党の一つの国民戦線では激しい派閥闘争が続く。路線対立を生む政策を推進しようとすれば、連立政権の基盤がすぐに弱体化しかねず、内政・外交ともに火種になる主張や改革を封印している。

アンワル氏がトップの政党連合、希望連盟は18年の前回総選挙でも勝利し、当時アンワル氏と共闘していたマハティール氏が首相に就いた。マハティール氏はシンガポールとの間の高速鉄道の建設計画中止や水の供給契約の見直しを主張し、両国の関係にさざ波が立った。国内改革の多くも頓挫し、マハティール政権は2年弱で崩壊した。アンワル氏は当時の失敗を踏まえ、外交でも慎重な対応を心がけているとみられる。

アンワル氏はASEAN各国の首脳との会談を一通り終えた後、米国や中国、日本など主要国への訪問を模索する見通しだ。アンワル氏は米中が経済面でも対立を強める中で、「米中双方と非常に良好な関係を維持しなければいけない」と強調する。中立の立場を維持し、主要国と経済分野での協力関係を維持・強化できるかが課題となる。

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