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香港、国安法が消し去った自由 施行1年で逮捕100人超

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【香港=木原雄士】香港で政治活動や言論の統制を強める香港国家安全維持法(国安法)が施行されて30日で1年となる。警察当局は同法に基づき、政権転覆や外国勢力と結託して国家安全に危害を加えたとしてすでに100人超を逮捕した。著名な活動家が相次ぎ収監され、社会から自由が消えた。

香港警察によると、27日までの逮捕者は15~79歳の男女117人に達した。容疑はほとんどが政治や言論の活動を対象にしたものだ。香港政府は当初、同法は「国家の安全を脅かすごく少数の者」を対象にすると説明していたが、主要紙の蘋果日報(アップル・デイリー)を廃刊に追い込むなど民主派の脅威になっている。

高度の自治を認めた「一国二制度」のもとで香港に保障されてきた言論や表現の自由も大幅に後退した。公立図書館は活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らの書籍を棚から撤去し、閲覧や貸し出しを停止した。香港政府は日本経済新聞に「国安法違反の疑いがある収蔵本に関するサービスは停止する。これまでに72件を処理した」と説明した。

すべての映画について、国安法を守っているか上映前に検閲する仕組みも新たに導入した。中国共産党に批判的とみなされる写真や絵画など芸術作品への風圧が強まっている。

民主派に影響力を持つ人物が次々と収監され、抗議活動はほぼ消えた。だが、当局が締め付けを緩める兆しはない。地域の問題などを扱う区議会議員について、7月にも香港政府への忠誠を誓う宣誓を求める。香港経済日報によると、200人以上の民主派議員の資格が取り消される可能性がある。

すでに立法会(議会)の選挙制度は大幅に変わり、中国共産党に批判的とみなす民主派を排除する仕組みが完成した。政治の場から民主派勢力を一掃する動きが着々と進む。

一方、金融市場や不動産市場は中国本土からの資金流入もあり、安定を保っている。米国は国安法の施行を受けて香港政府高官らに制裁を科したものの、経済的な影響が大きい金融機関への制裁は発動していない。

社会の激変を受けて欧米への移住希望者が急増し、香港の強みだった多様な人材を失う可能性がある。香港は政治的にも経済的にも中国への傾斜を強めるしかなく「国際金融センター」との世界的評価は傷ついている。

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