中国「食べ残し禁止」法可決 浪費ならごみ処理費負担も
大食い番組も禁止 違反者に罰金
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【北京=川手伊織】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は29日、食品の浪費を禁じる法律を可決した。飲食店は、大量に食べ残すなどした客からごみ処理の費用を徴収できる。暴飲暴食をあおる大食いを売りにした番組や動画の放送、配信も禁じ、違反者には罰金も科す。
即日施行した。草案によると、大食い番組にかかわったテレビ局や動画配信業者に最大10万元(約160万円)の罰金を科す。飲食店が客に過剰な注文を促すことも禁止し、是正の警告を無視した違反者には最大1万元の罰金を科す。中国には宴会の主催者が自らのメンツのために多めに注文する習慣がある。
飲食店のほか、食堂を持つ政府機関や学校、出前アプリを展開するネット企業にも食品の無駄が生じないような対策を要求した。スーパーには賞味期限切れが近い商品の管理を徹底し、まとめて売り出すよう求めた。
法律に事細かい要求や禁止を並べたのは、習近平(シー・ジンピン)国家主席が昨年8月「食糧安全保障には常に危機意識を持たなければならない」と強調したことがきっかけだ。大豆やトウモロコシを輸入する米国との対立が長引くことも視野に、飲食時の浪費を戒める指示を出した。
食べ残しを禁じる法律とは別に、「食糧安全保障法案」も2021年中に審議する方針だ。
政府系シンクタンク、中国社会科学院などの調査では、中国都市部の飲食店で年間1700万~1800万トンの残飯が発生している。3000万~5000万人が1年間に食べる量に相当するという。一方、就農人口の減少で25年に約1億3000万トンの食糧不足に直面しうるとの試算もある。