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シンガポールの人口、初の2年連続減 移民国家曲がり角

【シンガポール=中野貴司】シンガポール政府は28日、2021年6月末時点の人口が545万人と、前年同月末に比べ4.1%減ったと発表した。20年に続く減少で、2年連続の減少は1965年の独立以来初めて。

入国規制の強化やビザ発給の要件引き上げによって、人口の3割弱を占める外国人が10%を超える減少となったのが主因だ。有能な人材を海外から呼び込み経済成長の源泉にしてきた移民国家は曲がり角を迎えている。

外国人が前年比10.7%減の147万人となっただけでなく、国民と永住権保持者もそれぞれ0.7%減、6.2%減となった。4.1%の人口減少率は過去最大だ。

シンガポールは女性1人が生涯に生む子供の数(合計特殊出生率)が1.1と日本より低い。外国人の積極的な受け入れは長年、人口を増やし、必要な労働力を確保する上で欠かせなかった。

当初はビザを取得して移り住んだ外国人のうち、国の発展に貢献する人材には永住資格や国籍を与え、人口の減少を食い止めてきた。そのシンガポールで外国人の人口が大きく減ったのには主に2つの理由がある。

1つは新型コロナウイルスの感染拡大だ。海外からのウイルス流入を防ぐ目的で入国者を絞ったことで、ビザが発給されなかったり、渡航を延期したりする外国人労働者が相次いだ。建設現場で働く多くの低賃金労働者や家政婦の出身地である南アジアや東南アジアで感染者が一時、急増したことも入国者の減少に拍車をかけた。

もう1つは構造的な要因だ。国民の間では近年、「外国人に職を奪われている」との不満が高まり、政府はシンガポール人でも代替できる職務へのビザ発給を絞っている。専門職向けビザの取得に必要な月給額を20年だけで2回引き上げ、条件を厳しくした。

取得要件を満たしても申請が却下される例も増えており、「以前は本社からの派遣が認められていた幹部職をシンガポール人の内部昇格に切り替える必要が出ている」(日系金融機関幹部)。

リー・シェンロン首相は8月、「自国出身の社員を優先的に採用する海外企業や、シンガポール人には形式的に機会を与えるだけの企業もある」と指摘した。公平な雇用慣行を定めた指針を法律に格上げし、関係当局の規制権限を強める方針も示した。専門職や中技能の労働者向けのビザの発給要件を今後も厳しくすると明言した。

ただ、行き過ぎた規制への懸念も出始めた。ローレンス・ウォン財務相は9月中旬の国会で「シンガポール人と外国人の雇用は(一方が利益を得たら、もう一方が損をする)ゼロサムの競争ではない」とし、厳しい規制を課せば人材が香港やニューヨークなどに流出するだけだと訴えた。

経済成長率の回復とともに雇用環境も改善している。政府は国民感情に配慮しつつ、人口減少に歯止めをかける方策を検討していくとみられる。

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