汚職で有罪のナジブ氏入閣せず マレーシア

【シンガポール=中野貴司】マレーシアのイスマイルサブリ首相は27日、閣僚名簿を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大が続く危機時であることを踏まえ、アズミン・アリ上級相兼貿易産業相などムヒディン前政権の主要閣僚の多くが留任した。巨額の汚職事件で有罪判決を受けたナジブ元首相は入閣しなかった。
イスマイルサブリ氏は27日の会見で「新閣僚には経験豊富で、経済再生を実現できる人材を選んだ」と強調。「(新閣僚の下で)各省庁は最初の100日間で成果を出す必要がある」と、新型コロナ対策や景気のテコ入れ策の実行を急ぐ姿勢を示した。
留任したのはアズミン氏のほか、ザフルル・アジズ財務相、ムスタパ首相府相(経済担当)らだ。ヒシャムディン前外相が国防相に、ワクチン接種を主導していたカイリー・ジャマルディン前科学・技術・革新相が保健相に就くなど、前担当と近い分野への横滑りも目立つ。
マレーシアでは26日も1日あたりの新型コロナの新規感染者が過去最多を更新した。感染抑制が喫緊の課題になっている。閣僚の入れ替えを少なくして、前政権からの移行に伴う新型コロナ対策や経済への悪影響を最小限に抑える考えだ。
一方、ナジブ氏や、同様に汚職で起訴されている統一マレー国民組織(UMNO)のザヒド総裁は閣僚に登用されなかった。UMNOが3年ぶりに首相ポストを取り戻したことでナジブ氏らが復権するかが焦点だったが、ナジブ氏らの登用には連立政権内でも反対が強く見送った。ナジブ氏らは水面下で影響力を行使しようとイスマイルサブリ氏に圧力をかけるとみられ、新政権の火種となるのは間違いない。