中国発着の国際線、一部緩和も「ゼロコロナ」の壁厚く
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中国は今冬から来春にかけ、同国を発着する国際旅客便を前年同期の約2倍に増やす。新型コロナウイルスの感染拡大以降、海外からの流入を防ぐため厳格な制限を実施してきたが、国内航空会社の経営に配慮して一部を緩和する。ただ感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」は維持されており、先行きは依然視界不良が続く。
中国民用航空局は10月26日、10月下旬から3月下旬に中国を発着する国際旅客便は1週間あたり840便に達する計画だと発表した。前年同シーズンの約2倍の規模になる。フライト数が増加するのはコロナ禍以降で初めてだ。
例えば最大手の中国南方航空は大連と成田、広州とジャカルタなどを結ぶ路線を再開した。中国国際航空は杭州とローマをつなぐ路線を復帰させた。
国際線は各国当局や空港と航空会社が協議しながら、半年単位でどの空港との路線を設けるか決める。中国は新型コロナの感染拡大後、この門戸を厳しく絞り込んでいた。さらに中国に到着する便の感染者数に応じてその後の運航を制限する施策なども設けており、極めて厳しい水際対策を敷いてきた。
今回の国際線受け入れ制限の緩和は、民航局の立ち位置の難しさを映す。
中国南方航空の2022年1~9月期決算は売上高が前年同期比11%減の701億元(約1兆4千億円)、純損益が175億元の赤字(前年同期は61億元の赤字)だった。中国国際航空と中国東方航空も赤字が拡大しており、他国では採算回復が見え始めている航空会社が多いのとは対照的だ。
中国大手3社はいずれも国有資本が後ろ盾だが、経済合理性に大きく反した補填を続ければしわ寄せはいつか顕在化する。民航局はこうした現実と習近平(シー・ジンピン)指導部のゼロコロナ政策との間で苦慮した結果、今回の一部緩和に至った。民航局幹部は国際線計画を発表した記者会見で「(ウイルスの)外からの流入と、内のリバウンドを防ぐ」と念押しするのを忘れなかった。

実際、今冬から来春にかけての計画フライト数は19年の同シーズンの5%、貨物を合わせても3割程度にすぎず、コロナ前の水準にはほど遠い。中国の証券会社、中信証券は中国勢の国際線運航規模は23年末までに19年の50%程度に回復すると予測するが、ゼロコロナの解除がみえないなか、楽観的だと言わざるを得ない。
国際線と両輪をなす国内線事業も、各都市で感染者が増えるたびに移動制限がかけられ不安定だ。国の資本が入っているだけに大胆な構造改革も難しく、目先の収益改善は期待できそうもない。航空業界の苦境は当面続きそうだ。(広州=比奈田悠佑)
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