TSMC、最先端半導体を台湾で量産開始 米拠点に4年先行

【台北=龍元秀明】半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)は29日、台湾の新工場で世界最先端の半導体「3ナノ品」の量産を始めたと発表した。処理性能は従来品に比べ10~15%向上し、サーバーやスマートフォンへの搭載を予定する。TSMCが米国に新設する工場では2026年の量産を計画しており、台湾の拠点が4年も先行する形となる。
台湾南部・台南市の新工場で同日、量産開始の記念式典を開いた。経営トップの劉徳音・董事長は「TSMCは台湾に大きく投資して、技術のリーダーシップを維持していく」と述べた。
TSMCは6日、半導体の工場誘致を進める米国政府の要請に応え、米西部アリゾナ州に3ナノ品の新工場を設けると発表した。同工場は26年の量産開始を予定しており、当面は台湾での集中生産が続く。
TSMCは先端半導体の生産で世界シェア9割を占め、現在は全量を台湾で生産する。25年には台湾で、3ナノ品のさらに次世代となる「2ナノ品」の量産を始める計画だ。
今回量産を始めた3ナノ品は、従来の「5ナノ品」に比べ処理性能が10~15%高く、動画などのデータ処理が速くなる。消費電力は30~35%抑えられ、スマートフォンなどの「電池持ち」を改善できる。
中国経済の減速などを背景に、半導体業界は22年夏場から在庫調整局面が続いている。TSMCも10月、22年通年の設備投資額見通しを、従来に比べ約1割減の360億米ドル(約4兆8000億円)に下方修正した。競争力の鍵を握る先端分野の投資については、積極姿勢を維持している。