韓国・尹政権、保守系の要人ら一斉恩赦 文前大統領の側近も - 日本経済新聞
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韓国・尹政権、保守系の要人ら一斉恩赦 前大統領側近も

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【ソウル=恩地洋介】韓国政府は27日、李明博(イ・ミョンバク)元大統領や朴槿恵(パク・クネ)政権の元幹部ら有罪となっていた同じ保守系の要人を一斉に特別赦免(日本の恩赦に相当)とした。2024年の国会議員選挙をにらみ、与党の結束を強め政権浮揚につなげる効果を狙った。

韓国大統領には、有罪が確定した人物の刑の執行を免除したり効力を喪失させたりできる特別赦免の権限がある。

李元大統領は在任中の収賄や横領の罪に問われ、革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権で懲役17年の実刑判決を受けた。28日付で15年近い残り刑期は免除され、選挙権と被選挙権を回復する。

今回の特別赦免の対象は1300人超だった。政治家や公職者で目立つのは、収監されていた朴政権の要人たちだ。

駐日大使や情報機関トップの国家情報院長などを歴任した李丙琪(イ・ビョンギ)氏はその一人。安倍政権の官房長官だった菅義偉前首相らと親交を結び、慰安婦問題に関する15年の日韓合意のとりまとめに奔走した。

朴前大統領が弾劾されて文政権が発足すると、朴政権の幹部の多くが罪に問われた。李丙琪氏は国家情報院が大統領府へ秘密資金を提供した事件に絡んで有罪判決を受け、収監された。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は当時、検察で朴政権に絡む事件捜査の責任者を担った。このため保守系の支持層の一部にはしこりが残っていた。尹氏は5月の政権発足前に韓国南部の大邱(テグ)にある朴氏の自宅を訪ね、名誉回復に努めると約束した。

与党「国民の力」は23年3月に新代表を選出し、24年4月の総選挙に向けた本格的な準備に入る。今の国会では過半数の議席を占める野党「共に民主党」が主導権を握り、政権与党の政策決定の足かせとなっている。

尹政権の安定的な運営のためには、総選挙での与党の勝利が欠かせない。足元の政権支持率は徐々に回復基調にあり、特別赦免によって保守勢力の結束をはかる好機と判断したもようだ。

野党政治家も特別赦免の対象となった。文前大統領の側近の金慶洙(キム・ギョンス)元慶尚南道知事は、国会議員だった16年にインターネットで不正な世論操作をした罪に問われ、懲役2年の実刑が確定していた。

革新系勢力に影響力を持つ文氏の腹心が釈放となれば、野党内の団結を乱す効果が見込める。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表と文氏に近い勢力の間には距離があるからだ。政府は金氏の選挙権と被選挙権の回復は認めなかった。

韓国では政権交代のたびに政敵の罪が問われる一方、時の政権が特別赦免の権限を政治カードに使うことが珍しくない。文氏は21年末、大統領選の投開票を前に収監中の朴元大統領を釈放し、一枚岩でなかった保守系陣営を揺さぶろうとした。

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