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台湾、2月下旬に福島産など食品輸入再開 TPP加盟狙い

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【台北=中村裕】台湾当局は8日、2011年の東京電力福島第1原発事故後から、福島県など5県産の食品輸入を禁止した措置を解除すると発表した。キノコ類など一部の規制は残すが、2月下旬をめどに11年ぶりに輸入を解禁する。21年9月に加盟申請した環太平洋経済連携協定(TPP)入りに向け、日本との長年の懸案を解決し、加盟に弾みをつける狙い。

輸入を解禁するのは、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産の食品。台湾は放射能汚染のリスクがあるとして、5県産の食品の輸入をこれまで広く制限していた。

原発事故から10年以上が経過し、世界では40を超える国・地域がすでに同様の規制を段階的に撤廃した。現在でも台湾のように厳しく輸入禁止を続けるのは中国のみだ。

台湾の行政院(内閣)は同日、記者会見を開き、通商交渉トップの鄧振中・政務委員は「今回の決定はTPP加盟に向け、大きな助けになる」と強調した。羅秉成報道官は「世界の大多数がすでに規制を緩和した。台湾がTPPに参加するためには、日本からの合理的な(輸入禁止措置の撤廃)要求はもはや避けられない」と述べた。

ただ、台湾の世論は依然として、輸入に反対する声が根強い。

大手民間シンクタンクの台湾民意基金会が1月25日に発表した世論調査では、5県産食品の輸入解禁に54.6%が反対し、過半を占めた。賛成派の38.8%を大きく上回った。特に「絶対に反対だ」と答えた人は全体の37%にも上った。

蔡英文(ツァイ・インウェン)政権が世論を押し切ってでも、5県産食品の輸入規制を撤廃し、TPP加盟を優先する背景には中国の存在がある。

輸出が経済をけん引する台湾では現在、輸出の4割強が中国向け。経済は中国に大きく依存する。昨年の輸出額も約51兆円と過去最高を記録したが、4割強の約21兆円を中国向けが占めた。

そのため、対中強硬路線を敷く蔡政権は、中国からの経済的な自立が欠かせないとし、以前から「脱中国」の切り札に、TPP加盟を位置付けていた。

台湾は、1月に発効した日中韓や東南アジア諸国を含む15カ国が加わる東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)にも加盟できず、自由貿易協定(FTA)を締結する国もニュージーランドやシンガポールなどにとどまる。

TPP加盟は蔡政権にとって悲願で、主要加盟国の日本との長年の懸案を片付け、加盟国にアピールする必要もあった。

ただ、5県産食品の撤廃はTPP加盟を保障するものではない。加盟には、既存加盟国の全会一致の承認が必要だ。

21年9月、台湾とほぼ同時に加盟申請をした中国は、台湾の加盟に強硬に反対し、加盟国に対してロビー活動を続けている。1カ国でも反対すれば、台湾のTPP加盟は実現しない。

一方、台湾の発表を受け、日本企業からは歓迎の声が上がった。大手飲料メーカーの経営幹部は「当社の最大規模の工場が茨城県にあるが、台湾に輸出できないジレンマが長年あった。台湾の今回の決定はうれしい限りだ」と話した。

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