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プルタミナ、もろ刃のバイオ燃料シフト パーム油に逆風 

インドネシアとマレーシアは世界のパーム油生産の8割以上を占める(マレーシア・キャリー島のヤシ農場、2020年1月)=ロイター

【ジャカルタ=地曳航也、エルウィダ・マウリア】インドネシアの国営石油プルタミナがバイオ燃料シフトを進めている。燃料生産に占める割合は半分弱に達しており、今後も増やす。世界的な脱炭素の流れに沿うものだ。一方で、原料に使うパーム油の生産は環境破壊につながるとの指摘もあり、リスクを抱えた「もろ刃」の戦略だ。

プルタミナのニック社長は2日、再生可能エネルギーに対する方針を発表し、「化石燃料からバイオ燃料への移行を主導して温暖化ガスを減らす」と述べた。

バイオディーゼル、全体の半分に

同社がバイオ燃料として主に生産しているのがバイオディーゼル「B30」だ。ヤシから採れるパーム油由来の脂肪酸メチルエステル(FAME)を30%、軽油に混ぜて作る。国内28カ所に拠点があり、2020年の生産量は2470万㌔㍑だった。

インドネシアのバイオディーゼル市場における同社のシェアは80%を超える。生産量は24年までにさらに15%増やす計画だ。ガソリンなどを含む燃料全体の生産量は20年時点で5130万㌔㍑程度だったとみられ、ほぼ半分がバイオ燃料だったことになる。

パーム油由来成分だけで構成する新たな燃料「D100」の開発も進めている。単純にFAMEを100%にすると沈殿物の発生などでエンジンが劣化しやすいためだ。昨年に続いて今年1月にも少量を試験生産し、量産技術の確立や採算性の向上に取り組む。

バイオ燃料シフトを進める背景には需要の急増がある。インドネシア政府は18年、ディーゼル車や船舶、建機などにバイオ燃料を使うよう義務付けた。バイオ成分の割合は段階的に引き上げる方針で、当初は20%だったが現在は30%だ。21年中に40%とする計画だった。

ただ、ここに来てバイオ燃料のリスクも明確になってきた。

原料価格、10年ぶり高値圏

一つは原料価格の高騰だ。主産地マレーシアの悪天候に加え、新型コロナウイルスの影響から外国人労働者が減ったことでヤシの収穫に支障が出ており、パーム油価格は10年ぶりの高値圏で推移している。B30の価格はガソリンを2割超上回り、政府の補助金を通じてガソリンより価格を低く抑えている状況だ。

それでもB30の販売価格は原料コストの上昇をすべて反映できていないという。原油価格の下落も響き、プルタミナの20年1~6月期の売上高は前年同期比20%減の204億ドル(約2.1兆円)、黒字だった最終損益は9億ドルの赤字に転落した。

バスキ監査役会長は20年12月に「FAMEをつくっても利益が出ない」と政府にアピール。ジョコ大統領の側近でもあるバスキ氏の発言を受け、政府はバイオ成分の割合を40%に引き上げる時期の延期を決めた。

もう一つのリスクが環境破壊批判だ。中国やインドと並ぶパーム油の主要市場である欧州連合(EU)は、原料となるヤシの栽培にあたり森林伐採をするケースがあるとして圧力を強めている。

インドネシア政府には簡単に引けない事情がある。パーム油関連は主要産業の一つで、雇用を支えているからだ。国産のパーム油を使うことで原油の輸入量を抑え、貿易赤字を減らす思惑もある。同国は04年に原油の輸入が輸出を上回り、貿易収支を悪化させる要因になっている。

国営企業のプルタミナは政府の意向に反する事業戦略はとりにくい。一方で、欧州を含む海外の事業会社や金融機関とも多く取引しているため、ESG(環境・社会・企業統治)重視の流れとも無縁ではいられない。インドネシアの民間シンクタンク、経済金融開発研究所のビマ・ユディスティラ氏は「パーム油由来のバイオ燃料に今後も注力すれば、資金集めが制限される可能性がある」と話す。

EU、輸送燃料へのパーム油使用を段階縮小

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)と東南アジア諸国連合(ASEAN)は1月27日、パーム油に関する初の会合を開いた。共同の報道発表によると、両地域は持続可能な植物油の生産を目指す方針で一致した。次回会合は4月に開く。

EUは18年にパーム油を輸送用のバイオ燃料として使うのを段階的に縮小することを決めた。30年までに利用をゼロにする計画だ。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の目標を守るには、東南アジアでの森林破壊を止める必要があるとみる。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は環境政策の強化を掲げており、世界の森林破壊防止や持続可能な食料システムの構築に向けて、21年にも一段と厳しい規制案をまとめるとの観測がある。

一方、インドネシアのジョコ大統領は2月5日、マレーシアのムヒディン首相との首脳会談で、EUの「反パーム油キャンペーン」は自由貿易に反するとして共同戦線を張ることを確認した。

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