韓国、宇宙開発進展に期待 米とのミサイル指針撤廃で - 日本経済新聞
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韓国、宇宙開発進展に期待 米とのミサイル指針撤廃で

【ソウル=恩地洋介】韓国のミサイル開発を制限する「米韓ミサイル指針」の撤廃が決まった。21日の米韓首脳会談で合意したもので、宇宙開発や軍事産業の発展につながるとして韓国内で期待が高まっている。米国に安全保障を依存しない「自主国防」の実現を目標とする観点から、会談の最大の成果だと評価する声もある。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は26日、与野党の代表を招いた席で「韓米ミサイル指針の終了は、韓米同盟の堅固さを対外的に誇示する象徴的かつ実質的な措置だ」と述べ、首脳会談の成果を誇った。

指針によって、韓国はこれまで射程が800㌔㍍までのミサイルしか開発できなかった。韓国軍が保有するミサイル「玄武」シリーズは、北朝鮮をカバーするが北京や東京には届かない。

今後は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を妨げる規制はなくなる。大型の軍事用ドローンなども作れるようになる。

指針は1979年に作られた。当時の朴正熙(パク・チョンヒ)政権が核開発を始めようとしたことを受け、カーター米政権は東アジアの緊張拡大を懸念。韓国のミサイル開発を「射程180㌔㍍、弾頭重量500㌔㌘」に制限した。

北朝鮮が核・ミサイル開発を加速したことを踏まえ、指針は順次緩和された。2012年には800㌔㍍までの射程が認められ、17年には弾頭の重量制限が取り払われた。

指針の存在は韓国にとって宇宙開発の足かせとなり、ロケット開発は大幅に出遅れた。宇宙開発目的のロケットに取り扱いが容易な固体燃料が使えるようになったのは昨年のことだ。

指針撤廃を踏まえ、韓国政府は宇宙開発や関連する民間産業の育成に注力する姿勢を見せている。文氏は26日の会合で「宇宙産業の発展へ道を開き、独自の衛星航法システムを確保できる。自動運転車などの発展に大きな役割を果たす」と強調した。

指針の撤廃は、文政権を支える革新系だけでなく保守勢力も評価している。保守系紙・東亜日報は「韓米同盟発展への重要な契機となり、対北朝鮮の抑止力を大きく向上させられる」と指摘した。

周辺国から侵略された歴史を踏まえ、自立した安保能力を整える「自主国防」は、歴代政権が掲げた目標でもある。韓国が独自のミサイル開発を重視する背景には、内向き志向を強める米国が将来、朝鮮半島から軍を撤退させる可能性を否定できないこともある。

米国が指針の撤廃を認めた理由については「米国がミサイルを直接配置する代わりに、韓国のミサイル能力を強化して中国をけん制する意図だ」(革新系紙ハンギョレ)と疑う見方もある。中国の反応を懸念する声もあったが、現時点で中国は指針の撤廃そのものには反発していない。

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