台湾外交部長、中国の威嚇行為強く批判 「現状を破壊」 - 日本経済新聞
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台湾外交部長、中国の威嚇行為強く批判 「現状を破壊」

【台北=中村裕】台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は26日、台北市内で記者会見を開き、中国が連日にわたり台湾周辺で威嚇行為を続ける状況について「現状を破壊する行為が続いている」と述べ、強く非難した。今月初旬のペロシ米下院議長の訪台以降、中国軍機が台湾海峡にある中台の事実上の停戦ライン「中間線」を連日越え、常態化している現状を訴えた。

呉氏は会見で、「中国軍は昨年から中間線は存在しないと言ったり、中国外務省も台湾海峡は国際水域には当たらないと主張したりと、徐々に現状変更を行ってきている」と批判し、危機感を示した。

実際、ペロシ氏が台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と台北市内で会談した今月3日以降、中国軍による現状変更の動きが活発化している。中国軍機は、25日現在まで、23日間連続で中間線を越え、台湾側に侵入を繰り返している。

台湾国防部の公表資料によると、中国軍が過去、中台の「国境」ともいえる中間線を越え、台湾側に侵入するのは1年間のうち、多くても数日程度だった。昨年も中間線を越えたことはほぼなく、その意味で現状は異常な状況に陥ったといえる。

ペロシ氏の訪台以降、中国は「中間線越え」を常態化させ、台湾に圧力を強める戦略に出た一方、米側は、台湾への議員団の訪問を「常態化」させることで、中国側に対抗姿勢をみせている。

ペロシ氏の訪台に続き、今月14日には上下院の超党派議員団が台湾を訪問した。さらに25日には米共和党の上院議員が訪台し、蔡総統と会談するなど、切れ目なく台湾支持を強くアピールし続けているのが現状だ。

呉氏は会見で、こうした米国からの相次ぐ訪問団について「中国の狙いは台湾を国際的に孤立させることにある。そのため(米国など各国から議員が)台湾を訪問してくれること自体に意味があり、流れを止めるべきではない。台湾人は皆、歓迎している」と訴えた。

一方、ペロシ氏の訪台は、中国側に台湾への圧力を強めるための口実を与えてしまったものにすぎないとする見方も出ている。ペロシ氏の訪台以降、中国軍機による台湾への圧力は確実に増したためだ。

こうした見方について、米中台など国際問題に詳しい台湾師範大学の范世平教授も「(ペロシ氏の訪台以降)米中は悪循環に陥ってしまった。この局面を打開するのは、容易ではない」と指摘した。

范氏は、その理由について「米国から議員が台湾を訪問すれば、弱気を見せられない中国の指導部は、強硬に出ざるを得ない。中国が強硬に出れば、米国も再び台湾に議員が訪問して対抗する構図で、これは完全に悪循環だ」と述べた。

台湾を巡り、米中関係の悪化が長引けば、今後は海外からの台湾への投資も減るなど、経済面への影響も懸念される。ただ台湾は、米中の攻防を受け入れざるを得ないのが現状。主体的には動けず、守りの姿勢を貫かざるを得ない状況が続く。

米国の議員団に続き、今秋にはカナダ、英国、ドイツ、日本から相次ぎ議員団が台湾を訪問する予定で、各国で調整が続いている。中国からは、さらに大きな反発が台湾に向けて予想される。相次ぐ議員団の訪台に、党大会を間近に控えた中国の出方が今後注目される。

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