韓国中銀、22年成長率予測を2.7%に引き下げ
2月予想から0.3p下振れ、物価抑制に利上げ継続方針

【ソウル=細川幸太郎】韓国経済の先行きに逆風が強まっている。韓国銀行(中央銀行)は26日、2022年の国内総生産(GDP)の実質成長率見通しを2月時点の3.0%から2.7%に下方修正した。世界経済の減速や原材料高を受けて設備投資と建設投資などの見通しを引き下げた。13年ぶりの水準に達した物価高騰に対応して、政策金利を引き上げていく方針も示した。
内訳を見ると、設備投資をプラス2.2%からマイナス1.5%に、建設投資をプラス2.4%からマイナス0.5%に大きく下方修正した。
韓銀の担当者は「(半導体など)IT分野を除く業種で投資が振るわない。資材価格の上昇も建設投資の下押し要因となる」とした。建設資材の高騰で投資を控える動きが広がりそうだという。
ロシアによるウクライナ侵攻や、中国でのロックダウン(都市封鎖)で世界貿易が停滞する懸念が高まっており、輸出と輸入もわずかに下方修正した。サプライチェーン(部品供給網)の混乱も長引き、代表的な輸出品目である半導体も出荷が停滞している。
一方、民間消費は従来のプラス3.5%から3.7%に上方修正した。韓銀は「防疫措置の緩和で対面サービスや観光需要が急速に回復する」と予測する。
韓銀が経済の下押し要因として最も警戒するのが物価高だ。26日の金融通貨委員会では政策金利を0.25%引き上げて年1.75%とした。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「今後数カ月間は物価を中心に政策を運用する」として追加の利上げを示唆した。

韓銀は同日、22年の消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しを2月予測の3.1%から4.5%に大きく引き上げた。李総裁は「物価上昇率のピークは上半期よりは中盤以降となる可能性がある」と指摘し、4月の4.8%上昇からさらなる上振れを警戒する。
米連邦準備理事会(FRB)はインフレ封じ込めのための利上げを急ぐ。韓国も金利を引き上げなければ米韓の金利差によって海外マネーが韓国から流出する懸念が高まる。
証券市場では外国人投資家が1~4月に12兆ウォン(約1兆2千億円)以上を売り越しており、ウォン安に拍車がかかる可能性もある。
その一方で、FRBのように大胆な利上げが難しい韓国特有の事情もある。不動産価格の高騰によって家計の借り入れがふくらんだが、住宅ローンの8割ほどが変動金利だ。
政策金利が急上昇すればローン支払いの負担が重くなり、消費を冷え込ませかねない。李総裁は「政府の財政政策と協調していく」とし、消費に打撃をあたえることなく物価を抑制していく考えを示した。