習近平氏「新冷戦、世界を分裂」 バイデン政権をけん制 - 日本経済新聞
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習近平氏「新冷戦、世界を分裂」 バイデン政権をけん制

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【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は25日、世界経済フォーラム(WEF)のオンライン形式の会議で講演した。バイデン米政権を意識し「新冷戦や制裁は世界を分裂に向かわせ対立させる」とけん制した。気候変動問題で対話の糸口を探る考えも示した。

バイデン大統領が1月20日に就任して以降、習氏が対外的に演説するのは初めて。習氏は「単独主義や自己陶酔で傲慢になるいかなるやり方も必ず失敗する」と述べた。

トランプ前政権が掲げた「自国第一主義」をバイデン氏が継続しないように強くけん制した。米中対立の長期化を警戒しているとみられる。

「各国の違いを尊重し内政干渉をすべきではない」とも話した。バイデン政権が新疆ウイグル自治区に住むウイグル族の人権問題を重視しており、懸念する姿勢をみせた。

一方で「中国は対話で意見の食い違いを埋める努力をする」とも語り、米政権との対話の再開に意欲をにじませた。「協議や連携を堅持し、衝突や対抗は求めない」とも強調した。

習指導部が米国との対話の糸口になるとみているのが気候変動問題だ。バイデン氏は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰する考え。習氏は「パリ協定を実行に移してグリーン経済の発展を促す必要がある」と歩調を合わせた。

習氏、コロナ・経済で主導権狙う ダボス準備会合
【北京=羽田野主】世界経済フォーラム(WEF)は25日からオンライン形式の会議「ダボス・アジェンダ」を開き、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が特別講演した。新型コロナウイルスの感染が止まらないなか、中国は国際連携を促し、バイデン米政権に先手を打つ。

習氏が演説でみせたのは新型コロナの抑制と中国経済の回復に向けた「自信」だ。中国は公式統計上はコロナの感染者数が米欧日より少なく、2020年は主要国で唯一プラス成長を確保した。「世界経済を長期安定した発展軌道に乗せる」と中国経済の成長が貢献できるとの考えも示した。
習氏は「中国は新発展段階に立脚している」と強調した。新発展段階は習氏が1月に地方幹部らに述べたキーワードで「豊かになることから強くなることへの歴史的飛躍を迎える新たな段階」(習氏)と位置づける。

対米外交を巡ってもけん制色が濃い内容になった。バイデン政権が進めようとしている同盟国外交を念頭に、国際社会の「インナーサークル」の形成に向けた動きや、米中のデカップリング(分断)を批判した。

バイデン氏との対話に意欲をみせながらも、内需を中心に中国経済を回していく「双循環」構想の推進を改めて強調した。広域経済圏「一帯一路」を推進する考えも示した。米中の長期対立を覚悟する姿勢を表す狙いがあったとみられる。

習氏は「ワクチンの研究開発や生産、配分を巡る連携を強化する」と述べた。中国はアフリカや東南アジアなどにワクチンを低価格で提供し、囲い込みに動いている。

バイデン政権の機先を制しコロナ対策や経済再生を訴え、国際社会で主導的な役割を担う意欲がうかがえる。習氏の母校の清華大学の戦略・安全研究センターは2020年末に「バイデン政権は発足後はコロナ対応と経済再生を優先し、対中関係に回す政治資本は限られる」とするリポートをまとめた。

習氏が前回ダボス会議で演説したのは17年1月で、トランプ米政権の発足直前だった。「保護主義に反対する」と強くけん制した。

当時の演説は海外投資家らの大きな関心を集めたが、いまは批判も受ける。中国は「開放型経済」の推進を表明しつつも、オーストラリアがコロナ発生源の調査を求めると、農産品などに輸入制限をかける制裁を突然発動した。中国の主張にそぐわない国には経済圧力をかける「二重基準」に対し、米欧で不信感がくすぶる。

17年の演説では「市場が資源配分の中で決定的な役割を果たすようにする」と指摘し中国経済の改革の必要性を強調したが、今回は触れていない。人民元安への誘導も否定していたが、今回の演説では言及しなかった。
ダボス会議は1971年から開催されている。例年スイス東部のダボスで世界の首脳や経営者が集まり議論してきたが、21年1月の年次会合はコロナ禍で延期された。

年次会合は5月にシンガポールで開く予定だが、今回は議題を詰める準備会合と位置づける。各国首脳・グローバル企業のトップら70カ国1500人超がオンラインで参加する。

習氏の25日の特別講演を皮切りに、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領が26日に発言する。27日には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領やイスラエルのネタニヤフ首相が登壇し、菅義偉首相は最終日の29日に演説する予定だ。

米国はバイデン大統領の気候変動問題担当特使であるケリー元米国務長官が参加する予定だ。温暖化対策をきっかけに米中が関係再構築に向けて動き出すかが注目される。

WEFのクラウス・シュワブ会長は18日の記者会見で、既存の社会システムが信頼を失いかねない状態にあると語った。コロナ禍で経済格差が広がり、既存の資本主義や政治の欠陥があらわになったからだ。「この危機を乗り越えるには、世界への信頼を取り戻すことが必要だ」と述べ、コロナ後の世界を議論することが重要だとした。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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