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米コロナ失業対策、新興国潤す 20年送金額底堅く

【マニラ=志賀優一、メキシコシティ=宮本英威】出稼ぎ労働者などの新興国への送金が途切れない。新型コロナウイルスの感染拡大による失業で2020年は急減が見込まれていたが、微減にとどまったのは米国など主要受け入れ先の失業給付が支えになったとみられる。先進国経済の復調により21年は中米などで過去最高のペースを記録しており、送金が新興国の経済回復を助けそうだ。

「収入が落ちて厳しいが、メキシコに住む母親への送金は続けている」。米カリフォルニア州で中古車売買を手がけるカルロス・ラミレスさん(48)はこう話す。新型コロナの影響で中古車の取引件数は落ちた。以前と同じというわけにはいかないが、それでも平均で毎月300ドル(約3万円)程度は送っているという。

新型コロナによる世界的な経済への影響は出稼ぎ労働者の送金には大きな打撃にはならなかったようだ。世界銀行によると、20年の新興国(低・中所得国)への送金額は5395億2600万㌦と、前年比1.6%減だった。世銀は20年4月時点では、新型コロナ感染拡大が出稼ぎ労働者の雇用減少につながり、同19.7%減になると見込んでいた。

送金受取額で世界3位のメキシコに至っては10%増の約429億ドルとなり、過去最高を記録した。21年に入っても1~3月累計では106億2327万ドルと、前年同期を13%上回るペースだ。メキシコ同様、中米各国でも過去最高となり、増加基調は途切れていない。

20年にメキシコへの送金の大きな支えとなったのが、トランプ前米政権が実施した失業給付の上乗せ策などだ。海外からの出稼ぎ労働者でも正規の就労ビザを保有していれば受給する資格がある。通常時の給与より多く給付を受け取り、苦境にあえぐ本国の家族に送金した移民も多いという。

新興国にとって海外送金は貴重な外貨収入だ。メキシコの20年の送金受取額は国内総生産(GDP)比で4%、パキスタン、エジプトなどは10%弱を占める。低所得国では20~30%程度を占めることもある。出稼ぎ労働者の送金が本国の家族の食費や日用品、教育分野などの生計を支え、消費行動を促進する。

フィリピンも送金受取額がGDP比で約10%を占める。20年は前年比横ばいの349億ドルだった。同国のGDPの7割を個人消費が占める。みずほ銀行アジアオセアニア資金部の福田俊輔参事役は「フィリピンは20年にコロナ以外にも台風など天災にも見舞われたが、海外送金が同国の消費を下支えしたのは確かだ」と語る。

同国は人口の1割に当たる1000万人規模の出稼ぎ労働者がいるとされる。20年は中東や欧州からの送金は減少したが、米国からの送金の増加が補った。

中東などで家政婦として出稼ぎに行ったフィリピン人がコロナの影響で帰国を余儀なくされた一方、米国では医療関係者や大学教授などとして働く人も比較的多く送金が安定していた。そこに失業給付を含む米国の財政出動が本国への送金を支えたという。21年1~3月の海外送金受取額は前年同期比2.9%増と回復基調だ。

世銀は21年の新興国への海外送金額を前年比2.6%増の約5530億ドルと見込む。コロナの感染が拡大する前の19年(5480億ドル)を上回る水準だ。経済回復により雇用や給与額が回復することが送金額を押し上げる。

国際通貨基金(IMF)は米国の21年の経済成長率を前年比6.4%増と見込む。欧州の主要国のほか、多くの移民を受け入れている中東諸国でも経済回復が見込まれる。コロナ後の経済復調が海外送金を支える構図は続きそうだ。

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