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シンガポールと英国、デジタル経済協定署名

TPPより幅広いルール整備

【シンガポール=中野貴司】シンガポールと英国は25日、両国間のネット取引や貿易の促進をはかるデジタル経済協定に署名した。データの保存や電子決済の相互運用などに関して、環太平洋経済連携協定(TPP)より幅広く、先進的なルールを盛り込んだ。シンガポールはオーストラリアや韓国とも同様の協定を整備しており、市場拡大が続くデジタル市場のルール形成が進んできた。

シンガポールのイスワラン貿易担当相と英国のトレベリアン国際貿易相が25日午後、シンガポールで署名した。イスワラン氏は署名式で、「企業は両国を、アジアや欧州でデジタル事業を拡大する際の玄関口として活用できるようになる」と新協定の意義を強調した。

両国は既に伝統的な自由貿易協定(FTA)を結んでおり、新協定は電子商取引などデジタル分野のルールに特化したのが特徴だ。例えば、ソフトウエアの設計図にあたる「ソースコード」やアルゴリズム(計算手順)、暗号などの機密情報を相手国に開示しなくても済むようにした。金融機関がデータの保存場所を自由に選べるようにもした。自由なビジネス環境を保障することで、ネット企業の相互進出を促進する狙いだ。

両国の電子決済システムを相互に運用できるようにするほか、貨物の請求書類の電子化も進め、企業のコスト削減につなげる。国境を越える通信に不可欠な海底ケーブルの維持や保護、人工知能(AI)やフィンテックの革新の促進でも協力し、両国がデジタル分野で競争力を高められるようにする。国際送金サービスを手掛ける英ワイズのアジア太平洋地域の最高経営責任者(CEO)、ベンカテッシュ・サハ氏は「テック企業が革新的なサービスをより迅速に提供できるようになる」と新協定を評価する。

シンガポールはオーストラリアとの間で同様のデジタル経済協定を既に発効しているほか、韓国とも21年12月に交渉が妥結した。ニュージーランド(NZ)、チリとはデジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)を結び、多国間協定のプラットフォームに育てようとしている。デジタル分野の透明で高水準のルール作りを主導し、進出しやすい環境を整えることで、多くのテック企業を呼び込む狙いだ。

一方、TPPへの加盟を希望する英国は、シンガポールなどの加盟国とルール分野の協議をほぼ終えたばかりだ。TPPを補完する経済協定を2国間でも推進し、欧州連合(EU)離脱による負の影響を軽減したい考えだ。特に世界経済の成長の中心地であるインド太平洋地域の各国との連携強化は、重点課題となっている。

今後の焦点は米中がデジタル経済協定にどう絡んでくるかだ。米国は11日に、インド太平洋戦略を発表し、22年の早い時期に新たな経済枠組みを創設すると明記した。経済枠組みの対象にはデジタル分野の統治や接続性の向上が含まれており、この分野のルール形成に積極的なシンガポールなどを巻き込んでいく展開が予想される。

一方、中国は21年にTPPとDEPAへの加盟を立て続けに申請した。米中はデジタル規制への考え方が異なっており、米中が参加するかどうかで、これらの大型貿易協定の内容や位置づけも変わってくる。デジタル経済の分野は米中の覇権争いの場になっており、両国のせめぎ合いが今後一段と激しくなる見通しだ。

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