パナソニック、シンガポールで冷蔵庫部品の生産停止
700人解雇 マレーシアや中国に移管

【シンガポール=中野貴司】パナソニックは2022年9月までに、シンガポールでの冷蔵庫用コンプレッサーの生産を停止し、700人の従業員を解雇すると発表した。シンガポールの人員の約3分の1を解雇する大規模なリストラで、生産はマレーシアのマラッカや中国の江蘇省無錫の工場に移管する。
1972年に冷蔵庫の中核部品であるコンプレッサーの生産をシンガポールで始め、2017年にはコンプレッサー事業の本社機能を日本から移管していた。今回の生産停止の理由は「厳しい事業環境やコンプレッサー事業の戦略見直しの一環だ」と説明している。
17年当時は本社機能の移管と同時に「主力工場として生産性も高めていく」との方針を打ち出していたが、4年で戦略の変更を余儀なくされた。生産停止後も研究開発や本社機能はシンガポールに残るという。
今回のパナソニックの大規模なリストラは、シンガポールに拠点を置く製造業の構造変化を映している。高い人件費などを背景に従来型の製品や部品の生産環境が厳しくなる一方で、シンガポール政府は付加価値の高い最先端の製造業の誘致を急いでいる。
新型コロナウイルスワクチンを米ファイザーと共同開発する独ビオンテックは5月、シンガポールにワクチンの生産拠点を設立すると発表した。韓国の現代自動車も20年に、人工知能(AI)や自動運転といったIT(情報技術)分野の研究開発拠点をシンガポールに立ち上げると発表済みだ。