香港、国家安全に1000億円基金 20年度修正予算に計上

【香港=木原雄士】香港政府は24日、2021年度(21年4月~22年3月)予算案を発表した。20年度修正予算に国家安全維持のための費用として80億香港㌦(約1090億円)の基金創設を盛り込んだことも明らかにした。この基金は、20年に施行した香港国家安全維持法に基づく初の財政支出となる。
基金について、陳茂波(ポール・チャン)財政官は24日の記者会見で「詳しい内容は立法会(議会)に報告する」と述べた。中国政府が新設した出先機関、国家安全維持公署や警察の国家安全部門にかかる費用に使われるとの観測が出ている。今回の修正予算のような国家安全に関する支出は立法会の審議や承認を必要としない。
香港国家安全法は財政官が関連支出に充てる特別の金銭を手当てし、人員編成を許可しなければならないと定める。この支出は香港の法律の制限は受けないとも規定する。政府はすでに基金を組成し、数年かけて取り崩す見込みだ。
21年度予算案には消費喚起策として、18歳以上の市民1人あたり5000香港㌦(約6万8000円)の電子商品券の配布を盛り込んだ。対象は永住権を持つ市民など720万人。20年度に1人1万香港㌦の現金を配ったのに続くばらまき政策となる。政治的な締め付けを強める中で、市民の不満解消をねらった可能性がある。
陳氏は立法会の演説で「香港は過去2年間に苦難を経験した。予算案は経済の安定と負担の軽減に焦点を当てた」と説明した。21年の経済は新型コロナウイルス次第としつつ、実質成長率見通しはプラス3.5~5.5%とした。
コロナ対策による歳出増や税収の減少で財政赤字が続いている。20年度は過去最大となる2576億香港㌦、21年度は1016億香港㌦の赤字を見込む。政府は株式取引にかかる印紙税の税率引き上げなど歳入確保策も打ち出した。