/

米朝、対話再開巡り駆け引き 北朝鮮は中国接近も

朝鮮労働党中央委員会総会に出席する金正恩総書記=朝鮮通信

【ソウル=恩地洋介、ワシントン=永沢毅】非核化交渉の再開を巡る米朝の駆け引きが始まった。前提条件なしの対話を求めるバイデン政権に、北朝鮮側は「無意味な接触は考えない」と返答した。譲歩を引き出し、有利な交渉条件を整えたい意図がうかがえる。経済立て直しのため、北朝鮮が中国との関係強化を先行させるとの観測もある。

北朝鮮指導部は連日のように米国へのメッセージを発している。李善権(リ・ソングォン)外相は23日夜に出した談話で「我々は、貴重な時間を失う無意味な米国とのいかなる接触の可能性についても考えていない」と強調した。

22日には金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の発言をけん制する談話を出したばかりだ。サリバン氏が、党会議で対話の可能性を示唆した金正恩(キム・ジョンウン)総書記の発言を「興味深いシグナルだ」と評したことに、与正氏は「誤った期待だ」とかみついた。

相次ぐ北朝鮮要人の反応は、対話に入る前の条件闘争との見方が強い。北朝鮮はかねて「敵視政策」の撤回を米国に求めてきた。夏に予定する米韓合同軍事演習の中止などを主張する可能性がある。

金正恩氏は17日の朝鮮労働党中央委員会総会で対米戦略に言及した。「対話」と「対決」の両方を準備するよう説く一方、「対決にはより抜かりなく備えるよう」指示を出した。米国の対応次第では、核・ミサイルの挑発を再開するカードを示したとも受けとれる。

ただ、バイデン政権が唱えているのは「前提条件なしの対話」だ。21日にソウルで日韓両政府の高官と協議したソン・キム北朝鮮担当特使は「北朝鮮が私たちの呼びかけに肯定的に応じることを望む」と強調、米国務省のプライス報道官は22日に「核問題で北朝鮮と交渉する準備はできている」と述べた。

北朝鮮の非核化を最終目標に掲げるバイデン政権が、入り口から譲歩姿勢を示すメリットは乏しい。そもそも北朝鮮の非核化意思に懐疑的な見方が強く、政権に近い関係者は「北朝鮮には、自らの非核化を最終目標にする対話のテーブルに着く意思がない」と見る。

米ランド研究所のブルース・ベネット上席研究員は「トランプ政権は北朝鮮に多くを譲歩したが何も得られなかった。バイデン政権はその教訓を分かっている」と指摘する。

それでも熱心に対話を呼びかける背景には、バイデン大統領が副大統領を務めたオバマ政権の教訓がある。「戦略的忍耐」を掲げたオバマ政権は北朝鮮との対話に前向きな姿勢を示さず、結果的に北朝鮮に核・ミサイル開発の時間稼ぎを許した。

駆け引きが激しくなっているのは対話に向けた動きともとれる一方で、北朝鮮指導部は中国との関係強化を優先させようとしているとの見方もある。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、中朝境界の封鎖は1年半近く続いている。中国税関総署によると、2021年1~5月の輸出入額は20年同期比で84%減だった。経済制裁や昨年の水害の影響も重なり、金正恩氏は15日の党中央委総会で「人民の食糧事情が切迫している」と訴えた。

北朝鮮メディアは最近、中国との友好機運を盛り上げる記事を取り上げている。朝鮮中央通信は23日、中国共産党中央対外連絡部(中連部)が習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪朝2周年と金正恩氏の訪中3周年を記念し宴会を催したと伝えた。

7月11日には中朝の軍事条約である中朝友好協力相互援助条約が締結60周年を迎える。韓国の国家情報院系のシンクタンクは、この前後に北朝鮮高官が訪中する可能性を予測している。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン