香港アップル・デイリー紙、24日付で廃刊

【香港=木原雄士】中国共産党に批判的な香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)を発行する壱伝媒(ネクスト・デジタル)は23日、同紙の廃刊を決めた。オンライン版の更新を23日深夜に止め、紙の新聞は24日付が最後となる。香港国家安全維持法(国安法)に基づいて当局に資産を凍結され、事業継続を断念した。
蘋果日報は23日夜、最後の紙面制作を進める編集フロアを報道陣に公開した。24日付紙面は通常の10倍以上となる100万部を印刷する予定だ。本社の回りには多くの支援者が集まり記者らをねぎらった。
蘋果日報は1995年に創刊した。芸能記事なども取り扱う大衆紙として人気となり、近年は香港で民主派支持を鮮明にする、ほぼ唯一の日刊紙だった。壱伝媒は声明で「26年間にわたる読者の熱心な支援や記者、スタッフ、広告主に感謝する」と述べた。
同紙をめぐっては、創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏や張剣虹・最高経営責任者(CEO)、羅偉光・編集長、関連法人3社が国安法違反罪で相次いで起訴され、当局に一部の資産を凍結された。銀行口座への入金ができなくなり、従業員の給与支払いも難しい状況になった。

6月末の国安法施行1年や、7月の中国共産党創立100年を控え、香港の言論統制は厳しさを増す。香港は「一国二制度」のもと、言論や報道の自由が保障されてきた。今回、当局が主導して主要紙を廃刊に追い込む異例の事態となり、中国の強硬姿勢が一段と鮮明になった。
黎氏らは外国勢力と結託して国家安全に危害を加えた疑いが持たれている。香港警察は記事を通じて外国に中国や香港への制裁を求めたと主張する。反中国的な言論行為を徹底的に抑え込む狙いがあるとみられる。今後は他の民主派メディアも取り締まり対象になる可能性がある。