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韓国SKやLG、米でEV電池工場 米中対立の間隙突き合弁

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞
SKイノベーションは米国で矢継ぎ早に電池工場の建設を表明している(ジョージア州の同社工場)

【ソウル=細川幸太郎】韓国の車載電池大手が米国市場を攻略している。SKイノベーションがフォード・モーターと、LG化学がゼネラル・モーターズ(GM)と組み、車載電池工場の建設を推進する。米中対立を背景に世界首位メーカーの中国寧徳時代新能源科技(CATL)が踏み込めない米国市場で、韓国勢は顧客の取り込みで先行したい考えだ。

フォードと合弁、文大統領も訪問

急ピッチで建設が進むSKイノベーションの米ジョージア工場。ここに5月22日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の姿があった。米韓首脳会談のためにワシントンを訪れた後、同工場に立ち寄った文大統領は「電池は米国と韓国がともに発展できる良い分野。世界シェアを高めている韓国企業は最高のパートナーだ」と強調した。

SKイノベーションの電池工場を訪問した文在寅大統領(米ジョージア州)=韓国大統領府提供

SKは同工場に約3000億円を投じ、年産ベースで電気自動車(EV)22万台分に相当する22ギガワット時の車載電池を作る計画だ。さらにフォードとの合弁計画では、両社で6000億円を投じて60ギガの巨大工場を建設する。

SKの2019年時点の年産能力は韓国工場のわずか5ギガのみ。中国とハンガリーの工場立ち上げで20年に30ギガに拡大し、米工場が加わり23年に85ギガに、さらにフォードとの合弁を加えて25年には185ギガを上回る見通しだ。

後発SKの世界シェア(20年)は5%で6位。持ち前の大胆な投資決断で上位浮上を急いでおり、80兆ウォン(約8兆円)の受注を得て米中欧3カ所で増産計画を推し進める。

LG化学はGMと2工場

急ピッチで投資拡大するのは2位のLG化学も同じだ。GMや現代自動車、中国吉利汽車、米テスラなど幅広い顧客から15兆円規模の受注残を確保したもよう。米国ではGMと提携し、オハイオ州とテネシー州に年産能力で各30ギガの合弁電池工場を設ける。

SKとフォード、LGとGMがタッグを組むのは、電池の重要性が一層高まっているためだ。車体コストに占める比率が高く、電池の性能向上がEVの進化に直結する。そのため完成車メーカーは電池メーカーと手を携えて研究開発・増産投資を進める傾向が強まっている。

これら「米韓連合」づくりには脱中国という政治判断も影響する。1兆5000億円の投資計画を表明するCATLは広東省や福建省、四川省など中国に生産拠点を持つ。サプライチェーン(供給網)から中国を排除し、自国生産を推進するバイデン政権の意向も強く、米自動車メーカーにとっては中国以外のパートナーを探す必要があった。

中韓日メーカーで世界シェア9割

調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、車載電池市場は中韓日の6社で9割のシェアを占める。3位のパナソニックはテスラと深く協業しており、GMとフォードは果敢な投資拡大姿勢を評価し、LGとSKをそれぞれパートナーに決めた。

韓国政府は車載電池を「第2の半導体」と位置づけ、自国経済の屋台骨である半導体に次ぐ主力製品に育てる意向だ。LGとSK、そして4位のサムスンSDIの世界大手3社を擁する強みを生かして電池産業の集積を目指す。

需要が急速に拡大し、装置産業で上位寡占が進む電池産業は、半導体と似た構図と言える。ただ原価率が低く収益率が高い半導体と比べて、電池は電極材などの部材類の原価が高い。さらに車載分野は安全性や長期間の供給責任を伴う。現代自のEVリコール費用としてLG化学が約700億円を負担する事例が発生するなどリスクも大きい。

政治的な均衡揺らぎにリスク

さらに半導体産業との大きな違いは、既に中国企業がトップシェアを持つことだ。国家支援を得てCATLが大増産を続ければ、鉄鋼や太陽光パネルと同様、供給過多に陥る可能性も否定できない。

韓国の電池メーカーは米中対立を背景に、短期的には米欧の自動車メーカーからの受注が増える見通しだ。しかし、韓国は安全保障で米国の同盟国でありながら経済的には中国との結びつきが強い。一方に寄らないバランス外交で"いいとこ取り"を狙う韓国メーカーにとっては、政治的な均衡の揺らぎが最大のリスク要因であるとも言える。

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