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少子化中国、技能工を育成 職業訓練校を大卒・高卒扱い

減る生産人口、労働力確保へ格差是正

(更新)
多くの中国メーカーが人手不足に直面している(浙江省杭州市の金属加工会社)=ロイター

【北京=川手伊織】中国政府が、主に工場で働く技能工の育成策を打ち出した。技能工を養成する職業訓練学校に関する法律を改正し、卒業生に対して就職や昇進時に普通科卒らと差をつけることを禁じる方針。地方では学生の訓練校への誘導を狙った動きも出てきた。根強い学歴信仰の打破に加え、少子化が進む中で労働力の確保を急ぐ。

学生が通う職業訓練学校は主に2種類ある。1つは年齢層が大学生と同じ学校で、高等職業院校などと呼ぶ。もう1つは高校生と同じ中等専業学校などで、日本の高等専門学校に近い。

全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は6月、こうした訓練校を定める「職業教育法」の改正案審議に入った。法案では「職業教育と普通教育は同等に重要な地位にある」と明記。高等職業院校を卒業すれば大卒と、中等専業学校卒業なら高卒とそれぞれ同じ扱いにし、公務員試験や就職活動での差別を禁じる方針だ。都市戸籍の取得のほか、政府や国有企業での昇進においても普通教育をうけた人と平等に扱う。

企業の学校運営への参入も促す。企業側が即戦力として求める技術や技能を習得してもらうことで、就職先を確保しやすくする。既存の職業訓練学校が企業の資本を新たに取り込み、官民共同で学校を運営することも奨励する。

政府は既に高等職業院校や大学専門科の新入生を増やし始めており、直近2019年は前年より3割多く、11年ぶりに大学普通科の新入生を上回った。さらに法改正にまで乗り出すのは工場などにおける労働力不足が目立ってきたからだ。

「100人紹介してくたら26万元(約440万円)稼げます」。中国の家電大手ギャランツが広西チワン族自治区の村に掲げた広告がネット上で話題になった。大手ですら熟練工や工場労働者の確保に悩む。中国国家統計局が9万超の製造業を対象に最大の経営課題を調査したところ、44%が「採用難」と答えた。

15~64歳の生産年齢人口は13年をピークに減少が続く。長年の産児制限政策のツケで、働き手は中長期的に減り続ける。中国メディアによると、全人代の関係者は「25年までに、製造業の重要産業で3000万人近く、介護職員や家政婦で少なくとも4000万人が必要になる」と推計する。特定分野の技術にたけた労働者の不足は米国と覇権を争う中国にとってボトルネックになりかねない。

そもそも中国政府は経済管理などの高度人材を育てるため、大学など普通教育を重視してきた。18年までの10年間で大学普通科の新入生は4割増えた一方、高等職業院校や大学専門科の伸びは2割以下だ。高校では少子化の影響で新入生が5%減ったのに対し、相当する職業訓練学校では3割も減った。

大学教育の拡大に伴い、ホワイトカラー志向が強い大卒生も増え、就職難に直面している。6月の16~24歳の調査失業率は15.4%で、全体平均の5%を大きく上回る。工場の人手不足と若年層の就職難という雇用のミスマッチが深刻さを増すなか、職業訓練学校の活性化で構造問題の緩和も狙う。

一方、地方都市では、高校卒業生らの浪人を事実上制限する動きもある。重慶市は6月、市内の公立高校が一定の成績を残した卒業生に対して補習サービスを施すことを禁じた。貴州、四川、雲南各省も教育部局が同様の禁止措置を公表している。

志望大学に進学できなかった高校卒業生は、民間の予備校に通える。ただ母校の補習に比べて学費は大幅にかさむ。「浪人制限」といえる奇策の主な目的は、公立教育の公平性担保とされる。だが「一部の卒業生が高等職業院校などに進むことも期待した政策だ」という受け止めは多い。公立中学校に補習を禁じる都市もある。

ただ過度に学歴を重視する中国社会では「職業訓練学校の学歴が、普通教育より軽んじられている」(全人代関係者)。大学進学率の上昇に伴い大学院への進学など高学歴化も進んでいる。政府の思惑通りに、職業訓練学校へ進む学生が増えて将来の熟練工や技能者を速やかに育成できるかは見通せない。

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