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欧州と台湾、政治でさらに接近 台湾外相が東欧歴訪

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【台北=中村裕、ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)と台湾が一段と距離を縮めようとしている。台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は欧州を歴訪し、スロバキアで26日に開かれる国際会議で演説するほか、27日にはチェコでミロシュ・ビストルチル上院議長と会談する。経済だけでなく政治面でも欧台の関係強化を狙う。ただ、ドイツなど主要国は中国への刺激を避けたいのが本音で、関係強化が進むかは不透明だ。

呉外相の欧州訪問は19年にデンマークで開催された民主フォーラムに出席して以来、約2年半ぶりだ。呉氏は24日、欧州訪問への出発を前に「台湾はチェコやスロバキアと同様に自由、人権、法治を渇望している」と述べ、中国対抗を念頭に欧州との連携強化の姿勢をアピールした。チェコのビストルチル氏との会談は昨夏に同氏が台湾を訪問して以来。

台湾側はこれとは別に現在、国家発展委員会の龔明鑫主任委員(大臣)を代表にした経済視察団がスロバキア、チェコ、リトアニアの3カ国を歴訪中だ。地元メディアによると、視察団は25日にチェコの首都プラハで、インターネットセキュリティーや宇宙産業などの分野で協力する覚書に署名した。欧州との関係強化を模索する動きが続いている。

背景には、欧州の台湾への姿勢の変化がある。人権や民主主義を巡って中国との関係が悪化するなか、米国や日本などと同様に、同じ民主主義の台湾と連携を深めることが重要だとの認識が広がりつつある。

EUは9月、インド太平洋戦略を公表し、台湾と主に経済面での関係深化に踏み出す姿勢を打ち出した。さらに踏み込んだのが10月21日。欧州議会は、EUと台湾の政治的な関係強化を勧告する文書を賛成多数で採択した。文書に拘束力はないが、台湾をインド太平洋地域で重要なパートナーと位置づけ、関係を強めるべきだと主張した。

具体的には、EUの台湾での出先機関の名称を「欧州経済貿易事務所」から「EU事務所」に変更し、事実上格上げするように促した。さらには投資協定締結や世界的に不足する半導体調達などでの関係強化も促した。特に半導体は、欧州には最先端の製造技術を持つ半導体メーカーが1社もない。多くを米国や台湾、韓国に依存し、欧州現地での調達ルートの強化は喫緊の課題だ。

EUでデジタル政策などを統括するベステアー上級副委員長は、採決直前の19日、欧州議員を前に「台湾が民主主義、自由、開かれた市場を守るために我々は関与を強める必要がある」と発言。台湾との政治から経済まで広範の関係強化が、今後のEUにいかに重要かを訴え、理解を求めた。

こうした一連の欧州の動きについて、国際政治に詳しい台湾・成功大学の蒙志成副教授は「香港問題が欧州の台湾への関心を高めた。台湾への関心は、親中姿勢が強かったドイツのメルケル首相の退任も影響している」と指摘した。

ただEU内での温度差はまだ大きい。EUのボレル外交安全保障上級代表も「微妙なバランスが重要だ」と指摘するように、EUは台湾との関係強化で中国との対立を招く事態は望んでいない。EUの中国との貿易額は台湾の10倍以上で、中国は欧州経済に欠かせない巨大市場だ。中国の人権問題など譲れない面では主張しつつ、経済面での結びつきは維持したいのが本音だ。

とりわけドイツは中国への輸出依存度が高く、中国との関係悪化には非常に敏感だ。対中強硬の米国とは立場が異なる。

一方、台湾との関係強化を強く訴えるのは現在、欧州の小国が目立つ。中東欧やバルト3国が中心で、今回の呉氏の訪問も、当初はイタリアが予定されたが直前でキャンセルとなった。当局はポーランドも訪問予定としていたが、直近の発表では同国の訪問にも触れられなくなった。複数の台湾メディアによると「イタリア政府は中国に配慮し、台湾の大臣の訪問ビザの発給を急きょ止めた可能性がある」とも伝えている。

米国が対中姿勢を鮮明にするなか、欧州が今後、中国と台湾の間をどうバランスさせるかは依然、不透明だ。中国は強く反発している。習近平(シー・ジンピン)国家主席は25日、国連が中華民国(台湾)に代わり中華人民共和国の代表権を認めた「アルバニア決議」から50年の節目に演説した。「国際ルールは193の国連加盟国が守るべきだ。例外があってはならない」と述べ、最近の米欧など世界各国の台湾への接近を強く批判した。

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