インド、モディ氏巡るBBC番組に反発 視聴阻止へ指示

【ニューデリー=花田亮輔】インド政府がモディ首相を批判的に取り上げた英BBCの番組に反発している。インド国内で視聴できないようソーシャルメディアの運営会社に指示を出した。インド政府は同番組を「プロパガンダ」と呼び、強硬な姿勢を強めている。
ユーチューブとツイッターに対して、番組映像の投稿や共有を阻止するよう命じた。インド政府の上級顧問が21日、ツイッター上で明らかにした。対象となっているのはBBCによる連続ドキュメンタリーの初回で、ユーチューブとツイッターはともにインド政府の指示に従っているという。
ロイター通信によると同番組はインド国内で放送されていないが、ソーシャルメディアを通じて視聴できる状態にあった。2002年に西部グジャラート州で発生した暴動を巡り、州首相を当時務めていたモディ氏の対応などに疑問を投げかける内容だった。
インド外務省のバグチ報道官は19日の記者会見で、BBCの番組について「信用ならない物語を押しつけるために作られたプロパガンダ」と批判した。「率直に言って植民地時代の思考がみられる」とも反発していた。
インドで多数派のヒンズー教徒が少数派のイスラム教徒と衝突したグジャラート州での暴動では、1000人以上の死者が出た。死者の大半がイスラム教徒で、ヒンズー至上主義勢力を支持母体とするモディ氏が適切な対応をとらなかったとの批判が根強い。英米はモディ氏を非難してきたが、同氏の首相就任などを契機に関係改善を進めた経緯がある。
インドは世界最大の民主主義国家と位置づけられてきた。現在はG20(20カ国・地域)の議長国も務めている一方で、近年は権威主義的な政策を強めているとの懸念が増している。米人権団体フリーダムハウスは21年の報告で、インドに対する評価を「自由」から「部分的に自由」に引き下げた。