シンガポールで低温設備 フェデックス、ワクチン輸送で

【シンガポール=谷繭子】米フェデックスは東南アジアにおける新型コロナウイルスのワクチン需要に対応するため、シンガポールの低温倉庫などコールドチェーン(低温物流)設備の増強を進めている。東南アの医療機関などで緊急にワクチンが必要になれば、迅速に出荷できる態勢を構築する。シンガポール政府が目指すワクチン輸送ハブの一環を支える。
「ワクチンの輸送は当社の歴史で最も重要な仕事の一つだ」。フェデックス・エクスプレス・シンガポールのオードリー・チョン・マネジングダイレクターは21日の記者会見でこう強調した。
チャンギ空港の保税地区内にある倉庫に今月、マイナス70度と米ファイザーなどのワクチンの保管に対応できる大型冷凍庫を新たに2台導入した。センサーで運搬中の貨物の温度や湿度、露光などをモニターできるシステムも活用する。
シンガポール東部のチャンギ地区にあるフェデックスの生命科学センターを訪れると、ワクチンなど医薬品を専門に取り扱う広さ6000平方メートルのセンター内の超低温庫の温度はマイナス24.8度に保たれていた。熱帯のこの地だが、繊細な温度管理でエイズウイルス(HIV)やインフルエンザなどのワクチンのほか、新型コロナウイルスのPCR検査キットなどの保管に使われている。

フェデックスにとって、こうしたコールドチェーン対応の施設は東南アではシンガポールだけだ。液体窒素やドライアイスを使い、冷凍状態で輸送できる特別の箱や、バッテリー式冷蔵コンテナなどを使い、国内や海外の病院などでワクチンが緊急に必要となれば即座に配送する。周辺国の政府やワクチンメーカーと協議を進めており、認可がおり次第、シンガポールを経由地として生産地と需要地を結ぶワクチン輸送網をつくる考えだ。
シンガポールは2020年12月からファイザーのワクチン接種を開始した。同国政府はワクチンの輸送ハブを目指し、空港のコールドチェーン整備などを急いでいる。