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判決一転、主権免除適用 元慰安婦訴訟で韓国地裁

文政権の意向影響か

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【ソウル=恩地洋介】ソウル中央地裁は21日、日本政府に賠償を請求した元慰安婦らの訴えを却下した。国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、1月にあった別の元慰安婦訴訟での判決とは正反対になった。日韓関係の改善を唱える文在寅(ムン・ジェイン)政権の意向が影響した可能性がある。裁判は長期化も予想される。

21日の判決後、記者団の取材に応じる原告の李容洙氏=共同

訴訟が2016年に提起されて以降、日本政府は主権免除の原則の立場から公判には一度も出席していない。

判決は主権免除に関し「国際慣習法と最高裁の判例から、外国の主権的行為に対する損害賠償請求は認められない」と判断。問題解決は「外交的交渉を含む対内外的な努力で達成されなければならない」と指摘した。

慰安婦問題の最終解決をうたった15年の日韓合意が「被害者たちの権利救済手段」だったとも言及した。原告の元慰安婦16人のうち9人(故人含む)は、日本政府が拠出した10億円から支援金を受け取っている。

別の元慰安婦訴訟に対する1月8日の判決は、原告の訴えを認め、原告1人当たり1億ウォン(約970万円)の慰謝料支払いを日本政府に命じた。日本政府の行為を「組織的な反人道的犯罪」などと断じ「不法行為は主権免除の適用外」とした。日本側が控訴せず、この判決は確定した。

地裁が判断をひっくり返した背景には、解決策が手詰まりに陥った文政権の意向が影響したとの見方がある。文大統領は1月18日の記者会見で、判決について「困惑している」と話し、原告が受け入れ可能な解決策を日本と協議したい考えを示していた。

今回の訴訟は当初、1月13日に判決を予定していたが急きょ延期になった経緯がある。2月には地裁の定期人事異動で、担当判事の一部が交代した。韓国の裁判は世論や政治の影響を受けやすい傾向がある。

文政権は20年11月の米大統領選でバイデン氏が当選して以降、日韓関係を改善させる方針に転じた。バイデン氏はオバマ政権の副大統領時代、日韓合意の地ならしに関わった。5月後半にワシントンで開かれる米韓首脳会談では、日韓関係の修復も議題となると見られている。

2つの訴訟は相反する判決が出たが、1月に確定した訴訟の原告が日本政府資産を差し押さえる懸念は残る。地裁は訴訟費用の確保を目的とした強制執行に関しては「国際法違反」に該当するとの見解だ。賠償金の確保を目的とした差し押さえまでは今のところ否定していない。

原告を支援する市民団体は21日の判決を受けて「歴史を逆戻りさせる退行的な判決だ」と反発し控訴する考えを示した。原告の1人で元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏は国際司法裁判所(ICJ)への提起を訴えている。

韓国では22年3月の次期大統領選へ保革の対立が強まる。文政権が支持勢力の反対を押し切り、慰安婦問題の根本解決へ動くにはハードルが高い。

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