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中国、不動産規制はや微修正 信用不安で軟着陸に腐心

【北京=川手伊織】中国金融当局がバブル抑制を狙った不動産規制を早くも微修正し始めた。マンション市場の急速な冷え込みで、開発大手の中国恒大集団などの信用不安が強まっており、経済成長を下押ししているためだ。日本のバブル崩壊とその後の長期停滞の研究をもとに、不動産問題の軟着陸に向けて政策調整に腐心している。

「一部の金融機関は不動産企業への資金規制を誤解している」。中国人民銀行(中央銀行)の鄒瀾金融市場局長は15日の記者会見で、行き過ぎた融資の絞り込みを事実上是正する方針を示した。

人民銀は不動産会社30社に対して負債比率など守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けた。3つとも守れない企業には「有利子負債残高を増やしてはならない」と規制した。

一部の銀行は「過去の融資の返済を受けたあとでも、新規融資に応じてはいけない」と解釈し、不動産会社の資金繰りをより困難にしたという。

人民銀と銀行保険監督管理委員会は9月末の会議で、主要銀行に「不動産金融の健全性を保つ規制を正確に実行せよ」と求めた。規制そのものは見直さないが、銀行融資を増やすよう促す窓口指導といえる。

人民銀の潘功勝副総裁も10月20日の講演で「金融監督当局の指導のもと、融資と金融市場の価格は少しずつ正常な状態に戻っている」と強調した。

当局が軌道修正に動いたのは、金融規制で不動産会社の信用不安が強まってきたからだ。銀行の企業向け中長期融資は9月、前年同月を35%下回った。3カ月連続の2ケタ減だ。中堅不動産会社の債務不履行(デフォルト)が相次いでいる。不動産の開発や販売が落ち込み、7~9月の不動産業の実質国内総生産(GDP)は前年同期比でマイナスに転じた。

過剰に膨れ上がった不動産金融のリスクをどう抑え込んでいくか。難題に取りかかる中国当局が先行事例として研究を重ねてきたのが、1990年代の日本のバブル崩壊だ。

「日本の不動産バブル崩壊の教訓を重く受け止めよ」。政府系シンクタンク、国務院発展研究センターの王微氏らが2017年4月、中国メディアに載せた論文だ。

バブルがはじけた直接的原因として、公定歩合の連続的な引き上げや総量規制など急速な金融引き締めを挙げた。日本政府の事後処理も調べ、経済の長期低迷を招いた要因を分析した。金融緩和への過剰な期待、1997年の消費増税など財政の早期引き締め、バブル退治を目的とした92年の地価税導入の3つだ。

王氏らが提言した中国の対処法は主に2つある。金融規制をめぐり「引き締め度合いや規制強化のペースは、状況に応じて適宜調整すべきだ」と求めた。独立性が高い米欧の中央銀行と異なり、国務院(政府)の一部門である人民銀などの軌道修正もこの提言に合致する。

もう一つが財政政策だ。「(固定資産税にあたる)不動産税の短期導入はバブルを破裂させる可能性が高いので、タイミングはよく研究すべきだ」と指摘した。

人民銀の調査では、中国都市部の住宅所有者のうち3割が2軒、1割が3軒以上持っている。西南財経大学の調べでは空き家率は20%を超す。人口減少で同じく空き家が増える日本の14%を上回る。所有コストが高まれば、売却の動きが広がり価格が暴落するリスクをはらむ。

習近平(シー・ジンピン)国家主席は、8月の共産党会議で「不動産税の立法や改革を積極的かつ着実に進めなければならない」と語った。共同富裕の実現には、格差是正の機能がある新税が欠かせないからだ。ただ経済への配慮も付け加えた。「試験的な事業をしっかりと遂行する」。党関係者は「試行は2021年中にも始まるが、まずは1~2都市のみだ」と語る。

中国政府はバブル退治と経済配慮のジレンマに悩む。人民銀などが行き過ぎた融資の絞り込みを是正するよう指導した9月末の会議では「不動産を短期の景気刺激策としない」方針も確認した。不動産企業向け融資は緩めたが、住宅ローンなどの総量規制を変えないのはリスク抑制を重視している表れでもある。

金融を除く民間債務残高のGDP比率がバブル崩壊直後につけた日本のピークを超えた今、不動産に依存した経済成長を続ければ、金融リスクは制御不能に陥る可能性を高めるだけだ。新型コロナウイルス禍からの景気回復が一服し停滞感が強まるなか、習指導部は経済運営で難しいかじ取りを迫られている。

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