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中国、私立の小中を公立化 「教育の公平」目指し統制

【北京=川手伊織】中国政府は私立の小中学校の公立への転換を促す。原則として新設を認めず、既存の学校には高額な学費の徴収を禁じて統制する。市民の不公平感を解消し、家庭の教育費も抑える狙いだ。教育統制で共産党への愛党精神を徹底させる思惑も透ける。公立化が実際に相次げば、地方政府の財政難が一段と深刻になりかねない。

私立校に通う小中学生は中国全体で2020年、約1685万人だった。全中学生の15%弱、全小学生の9%を占める。

習近平(シー・ジンピン)指導部は、義務教育の統制を強めてきた。中国は一人っ子が多く、教育熱が高いため、教育コストが高騰し、若い夫婦が出産をためらう主因となってきた。すでに打ち出した学習塾の授業料の統制、私立校の公立化は、少子化対策や格差是正の意味を持つ。

政府の方針を受け、中国内陸部、陝西省政府の教育部門は11月上旬の記者会見で「義務教育を施す私立校の運営者が学校(財産)を地方政府に寄付あるいは譲渡し、公立校に変更することを奨励する」と表明し、公立化を進める考えを示した。

広東省仏山市の一部地区も私立校を買い取る方針を示した。湖南省長沙市や河南省周口市は22年末までに私立の小中学校に通う児童・生徒の割合を全体の5%未満に下げる目標を掲げた。

周口市の小中学生のうち私立校に通う割合は3割を超える。これを5%未満にするには、地元政府が私立校のうち60校以上を買い上げ、200校以上を閉鎖して8万人あまりの児童・生徒を公立校に振り向ける必要があるという。

地方政府が統制強化へ動くきっかけになったのは、共産党中央弁公庁と国務院(政府)弁公庁が5月に出した通知だ。

中国メディアによると、通知は私立の小中学校の新設を原則認めないという内容。日本の町内会くらいの規模の「小区」に建てた私立校は、関係者の意見が一致すれば公立校に転換させる方針を示した。

一部の私立校は、戸籍などの問題で公立校に入れない農村からの出稼ぎ労働者の子弟の受け皿になってきた。こうした私立校は存続させるが、地方政府が予算を管理する。

中国には公立校と企業が共同運営する私立校もある。例えば、有名公立校の分校として、不動産会社が学校経営に参画する場合だ。公立校にとっては企業の資金が魅力だ。不動産会社は学校周辺にマンションを建て、有名校のブランドを販売に生かせる。だが、中国政府は、23年夏ごろまでに共同運営の学校の多くを公立に転換させるよう、地方政府に求めた。

5月の通知は、私立校の高額な学費を問題視した。例えば、北京市には学費が年20万元(約360万円)を超す私立の小中学校がある。政府は私立の小中学校も学習塾と同様に非営利を徹底させる。

公立に転換しない私立の小中学校には、政府が標準の学費を示す。寄付金の受領も禁じる。児童・生徒の募集ではテストや面接による選抜を禁じ、越境入学も厳しく制限する。

こうした措置について、インターネット上では、教育の公平性が高まると支持する声がある一方、「なんでも政府の思うがままだ」との皮肉もみられる。今年夏に習指導部が「共同富裕(共に豊かになる)」の促進を打ち出し、富裕層らに社会への還元を呼びかけたことを重ね合わせる向きもある。

課題は、地方政府の教育支出が膨張しかねないことだ。民間の学校運営が増えた背景には地方の財源不足があった。公立校の割合を高めても財政難で教育支出を増やせなければ、施設や教員が劣化して教育の質そのものが損なわれる事態も考えられる。

小中高では9月の新学期から「習近平思想」が必修になった。私立校を公立校に転換して政府の管理を強め、思想教育を徹底する狙いもうかがえる。

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