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マレーシア、盆踊りが政治騒動に 州王が鎮静化

【シンガポール=中野貴司】マレーシアで人気行事として定着している盆踊りが政治騒動に巻き込まれている。イスラム保守政党出身の閣僚が不参加を呼びかけたのが発端で、州王が鎮静化に乗り出す事態になった。総選挙が近づく中で、多数派のマレー系イスラム教徒の関心を引く思惑も背景とみられる。多民族国家の融和の難しさを改めて浮き彫りにする。

クアラルンプール近郊で開催する盆踊りは日本人会や日本人学校、在マレーシア日本大使館が主催し、1977年から続く伝統行事だ。現地に住む日本人だけでなく、日本文化に関心のあるマレーシア人も多く来場し、参加者数は毎年約3万5千人に上っていた。新型コロナウイルス禍で2020年、21年は中止となったが、今年は7月16日の開催に向け関係者が準備を進めてきた。

3年ぶりの開催に冷や水を浴びせたのは、イドリス・アーマド首相府相(宗教担当)の発言だ。6月初旬に「盆踊りには宗教的な要素が含まれ、イスラム教徒は参加しない方がよい」と述べた。同氏は保守的な主張で知られる全マレーシア・イスラム党(PAS)の副総裁も務め、PASの女性部門なども同調した。

これに反論したのが、開催地スランゴール州の州王だ。9日付の声明で、16年に自ら参加した経験を明かした上で「マレーシアでも数十年間にわたり開催されてきた盆踊りは単なる文化的なお祭りだ」と指摘。「政治家が宗教的に繊細な問題を自らの人気獲得のために利用しないことを望む」とイドリス氏らを批判した。PAS幹部を呼び出すなどして、自ら事態の収拾をはかっている。

日本人会なども「日本とマレーシアの人々の関係をさらに深める機会となる」と意義を訴えており、今のところ予定通り開催できる見通しだ。

PASが盆踊りを俎上(そじょう)に載せた背景には、早ければ年内にも実施される総選挙がある。PASはイスマイルサブリ連立政権の一角を占めるが、次の総選挙では政権主流の統一マレー国民組織(UMNO)と組まず、選挙区で競合する見通しだ。両党ともに人口の7割を占めるマレー系が支持基盤で、PASはマレー系イスラム教徒の独自性を強調し支持を広げたい考えだ。

ただ、文化的な行事の政治化は民族や文化の異なる住民間の不和をあおる恐れがある。マレーシアでは69年にマレー系と華人系住民が対立し、大規模な人種暴動が起きた過去もある。ISEASユソフ・イシャク研究所のリー・ホックアン上級研究員は「PASが宗教的な信認を高めるために敵対的な姿勢を広めているのは遺憾だ。影響力のあるPASが(州王の批判後も)対応を改めようとしないのも懸念される点だ」と指摘する。

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