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中国、政策金融でインフラ融資拡大 10月金利据え置き

(更新)

【北京=川手伊織】中国政府が政策金融機関による金融支援に乗りだした。インフラ建設や未完成マンションの工事再開を促す。通貨・人民元の下落を警戒して利下げカードを切りにくいなか、政策金融を活用して特定分野に資金を流し、景気を下支えする狙いだ。

中国人民銀行(中央銀行)は20日、事実上の政策金利と位置づける最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)の1年物を年3.65%で据え置いた。住宅ローン金利の目安となる期間5年超のLPRも年4.30%と横ばい。いずれも2カ月連続で据え置いた。

元安が追加利下げを難しくする。元は中国本土外のオフショア市場で20日、一時1ドル=7.27元台まで下げた。データを遡れる2010年以降で最安値を記録した。海外投資家主導の元売り・ドル買いが続いている。

一方、9月は銀行の企業向けの新規融資が大幅に伸びた。設備投資などに充てる中長期資金は前年同月を94%上回った。21年2月以来の高い伸びとなった。

中国国家開発銀行、中国輸出入銀行、中国農業発展銀行の政策金融機関が貸し出しを増やしているからだ。3行は7月以降、インフラ投資基金を設立し、計6700億元(約13兆8000億円)超を投じた。政府は地方のインフラ投資を景気回復の柱に位置づける。

不動産向けでは計2000億元の融資枠を設けた。不動産開発企業の資金不足で工事が中断したマンションの完成を促す。これらの物件では今夏、購入者が抗議のため住宅ローンの返済拒否を表明する動きが広がった。政府は金融不安への発展を警戒する。

政策金融を通じて政府が重視する分野への融資は増えた。ただ、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策などで景気の先行きは不透明で、経済全体でみた資金調達の需要はなお低調だ。

人民銀行が約3200の銀行を対象にしたアンケート調査をみると、企業や家計の借り入れ需要を示す指数は4~6月、過去最大の悪化幅だった。水準も5年9カ月ぶりの低さとなった。最新の7~9月も戻りは鈍い。

なかでも個人向けの融資はマイナスが続く。住宅ローンが大半を占める中長期資金の新規融資は9月、前年同月を26%下回った。21年5月から減少傾向が続いている。

人民銀行は9月末、マンションの販売不振が続く一部都市で住宅ローン金利の下限撤廃も容認した。公的住宅ローンの金利も下げた。それでも住宅販売の書き入れ時である、10月の国慶節(建国記念日)休暇の新築マンションの販売面積は前年同期比で4割減った。

多くの国は設備資金など企業向け融資が伸びているときは景気が良いが、中国では一般的に企業向け融資が増えるときは景気が良くない。国有企業向け融資が多く、政府が国有銀行を動員して景気をてこ入れしていることを示すからだ。景気が本格回復するかどうかは個人向け融資の伸びに注目する必要がある。

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