マレーシア総選挙、11月19日に投開票

【シンガポール=中野貴司】マレーシアの選挙管理委員会は20日、連邦議会下院選挙の投開票日を11月19日に設定した。与党、野党勢力ともに統一候補を立てない分裂選挙となる見通しで、組織力に勝るイスマイルサブリ首相が属する国民戦線に有利な展開となる。
選管の発表によると、告示日は11月5日で選挙戦の期間は2週間となる。選挙権年齢を21歳以上から18歳以上に引き下げた制度改正の影響で、有権者数は2117万人と前回2018年の総選挙から4割以上増える。新たに投票権を得た若年層の投票行動が選挙結果に大きな影響を与える。
21年8月に発足したイスマイルサブリ政権は複数の政党の連立で辛うじて下院(定数222議席)の過半数を保つ寄り合い所帯。このうち約30議席を持つムヒディン前首相のマレーシア統一プリブミ党などが独自に候補を擁立する見通しだ。
野党側もアンワル元副首相が率いる希望連盟や、マハティール元首相が結成した祖国運動などがそれぞれ候補者を出す。222の小選挙区の大半で4人以上の候補者が争う可能性が高い。
イスマイルサブリ氏の国民戦線は議席数を現在の42議席から大幅に増やした上で、親密な地域政党との連立で政権を維持したい考えだ。直近の複数の州議会選挙で国民戦線や親密な地域政党が圧勝しており、総選挙でも国民戦線が議席数を伸ばすとの見方が多い。
一方、野党側は18年の総選挙で共闘したアンワル氏とマハティール氏が連携できておらず、勢いを欠く。与党の汚職政治を批判し、物価上昇に苦しむ有権者の不満の受け皿となることを目指す。野党は洪水の時期に入る11月後半に投票日を設定したイスマイルサブリ政権を、党利を優先したと非難している。
前回18年の総選挙では、マハティール氏が率いる野党連合が1957年の独立以来、初の政権交代を実現した。しかし、マハティール政権は内紛によって2020年2月に崩壊し、後任のムヒディン氏も1年半で辞任に追い込まれた。
今は18年の総選挙で敗北した国民戦線のイスマイルサブリ氏が、ムヒディン氏らと連立を組んで首相に就く。イスマイルサブリ氏は23年7月の任期満了を待たず、10日に下院の解散を発表した。