マレーシア総選挙、与野党とも過半数ならず

【クアラルンプール=中野貴司】19日投開票されたマレーシア連邦議会下院選(定数222、任期5年)は野党連合の希望連盟が最大の82議席を獲得した。解散前に連立政権の一角を占めていた国民同盟が73議席で続いた。どの政党も単独では過半数を獲得できず、主要各政党は20日、連立政権樹立に向け活発な交渉を続けた。
選挙管理委員会の発表によると、アンワル元副首相が率いる希望連盟が82議席、ムヒディン前首相がトップの国民同盟が73議席、イスマイルサブリ首相が所属する国民戦線が30議席、ボルネオ島の地域政党のサラワク政党連合が22議席、サバ人民連合が6議席を獲得した。マハティール元首相の祖国運動は1議席も獲得できず、マハティール氏自身も大差で落選した。222議席のうち2議席は投票日直前の候補者の死去などによって仕切り直しになり、すぐには結果が確定しない。

マレーシア王室は20日の声明で、過半数の確保に成功した政党連合は首相候補者名を、21日午後2時(日本時間午後3時)までに提出するよう求めた。マレーシア憲法は「国王が下院議員の過半数の信任を得ていると判断した議員を首相に任命する」と定めている。
国民同盟のムヒディン氏は20日夕の声明で、サラワク政党連合やサバ人民連合のトップと同日に会い、連立政権の樹立で合意したと主張した。サラワク政党連合は国民戦線も新政権に加わると説明している。仮に4政党が最終合意すれば、合計の議席数は131となり、過半数に達する。ムヒディン氏が首相候補となる方向で、解散前のイスマイルサブリ連立政権の枠組みに近い組み合わせになる。
ムヒディン氏はマハティール氏の辞任を受け、20年3月に首相に就任した。新型コロナウイルス対策を指揮したが、連立政権内の不協和音によって政権維持が困難になり、21年8月に辞任していた。国王から過半数の支持を得ていると認められれば、1年3カ月で首相に復帰することになる。

一方、希望連盟も国民戦線を切り崩すなどして、必死の巻き返しに動いているもようだ。アンワル氏は国民戦線トップのザヒド元副首相と近いとされている。希望連盟はマニフェスト(政権公約)で、副首相ポストの1つをボルネオ島の政党に割り当てる方針を示しており、21日午後2時の期限まで地域政党に翻意するよう働きかけを続けるとみられる。
前回18年の総選挙では、希望連盟が過半数の議席を獲得し、当時希望連盟に加わっていたマハティール氏が首相に就任した。しかし、20年2月に内紛によってマハティール政権が崩壊し、それ以降2度にわたり首相が交代する不安定な政治状態が続いていた。どのような枠組みで落ち着くにせよ、新たな連立政権が安定した運営を維持できるかが焦点となる。