/

フィリピン、ロシアに接近 ワクチン調達で中国依存下げ

ドゥテルテ氏㊧はプーチン氏との関係強化を急いでいる(写真は2019年10月の首脳会談)=ロイター

【マニラ=志賀優一、クリフ・ベンゾン】フィリピンが新型コロナウイルスワクチンの調達でロシアに接近している。フィリピンは南シナ海問題で中国と対立するが、ワクチン調達では中国に頼らざるを得ない立場にあった。調達先の多様化には中国への依存度を引き下げる狙いがあり、東南アジアへの影響力を強めたいロシア側もワクチンの供給を拡大する姿勢をみせている。

ロシア製のワクチン「スプートニクV」は4月中にも最初の50万回分がフィリピンに到着する見通しだ。フィリピン政府は合計2000万回分を注文しており、3月に緊急使用を許可した。同国政府は16日、5つの製薬会社・機関と契約を結んでいると明らかにしたが、スプートニクVにかける期待は大きい。

これに先立ちドゥテルテ大統領は13日、ロシアのプーチン大統領と電話協議し、ロシアの協力への感謝を表明。両首脳はスプートニクVの生産と供給を世界で加速させることが大切だとの認識で一致した。ドゥテルテ氏は感染が落ち着くなど状況が改善した後にフィリピンへプーチン氏を招待したいとも述べた。

両国の接近の背景にあるのが、フィリピンの中国製ワクチンへの依存と、緊迫する南シナ海問題だ。フィリピン政府は現時点で同国に届いた約300万回分のワクチンのうち8割以上を中国製に依存している。

南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島のサンゴ礁周辺では3月、多数の中国船が停泊を始めた。当初は1カ所に220隻が停泊し、その後範囲を広げた。フィリピンの国防省や外務省は同国の排他的経済水域(EEZ)内だとして即時退去を繰り返し求めるが、中国船はとどまり続けている。

現状ではワクチンの調達や経済面での結びつきが強いため、南シナ海問題で中国へ強硬な姿勢を貫きたくても難しい。ただ、スプートニクVの2000万回分など他の国のワクチンが届けば、中国製ワクチンへの依存度は3割程度に引き下げることが可能になる。ドゥテルテ氏がロシア製ワクチンを重視するのはこのためで、国際的にワクチン開発競争が展開された2020年夏には「私が最初に(スプートニクVの)実験台となる」とまで語っていた。

フィリピンからの歩み寄りはロシアにとっても好都合だ。旧ソ連時代から兵器を主要輸出品の一つとするロシアのプーチン政権は、経済成長が著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への武器の売り込みを図ってきた。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、14~18年に東南アジアへ最も武器を供給した国はロシアだった。

プーチン大統領はこれまでも、ASEANとの定例の首脳会合を開いてきた。ロシア側にはワクチンの供給を通じて関係を深めれば、南シナ海の問題で国防力の強化を迫られているフィリピンなどの関係国にさらに武器を売れるようになるとの計算もあるようだ。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

新型コロナ

新型コロナウイルスの関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。

ワクチン・治療薬 休業・補償 ビジネス 国内 海外 感染状況

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン