香港立法会、親中派ほぼ独占へ 自称民主派も数人出馬

【香港=木原雄士】12月19日投票の香港立法会(議会)選挙で親中派が議席をほぼ独占する見通しになった。候補者が「愛国者」かどうかを審査する政府の資格審査委員会が19日、審査結果を発表し、選挙の構図が固まった。定数90に対して自ら民主派と名乗る候補者は4人程度にとどまった。
今回の立法会選は中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が「愛国者による香港統治」を掲げて選挙制度を大幅に見直してから初めて。定数90に対して154人が立候補を届け出、審査委は153人の出馬を認めた。
主要な民主派政党が参加を見送るなか、届け出時点で民主派を名乗ったのはわずか4人程度にとどまった。自らを親中派でないと主張する中間派は9人ほど。いずれも知名度が低く、一部は中国当局から立候補を促されたとの観測もある。


審査委トップの李家超・政務官は19日の記者会見で「異なる政治理念や背景を持つ候補が含まれ、バランスが取れている」と述べたが、選挙の体裁を整えるために、非親中派の出馬をあえて容認したと受け止められている。
香港紙・明報によると、全候補者の4分の1程度が中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)や国政助言機関、全国政治協商会議(政協)などの委員で、中央政府とつながりが深い。香港メディアの分析では自称民主派や中間派の獲得議席は数議席にとどまる見通しだ。
米議会の超党派諮問機関は今月まとめた報告書で「香港立法会は選挙制度の変更によって親中派が常に過半数を占めるようになり、(当局の決定を追認するだけの)ゴム印議会に変わる」と指摘した。立法会から政府に批判的な勢力がいなくなり、行政監視機能が低下するとの見方が出ている。
香港の立法会選はもともと親中派に有利な仕組みだが、前回2016年選挙では候補者の4割以上が民主派など非親中派勢力だった。一般市民の投票で決まる議席も多く、民主活動家の羅冠聡(ネイサン・ロー)氏が23歳で当選するなど関心を集めた。
今回は候補者の9割超を親中派が占める。全90議席のうち、70議席を親中派の選挙委員や企業が決め、市民が投票できるのはたった20議席だ。有権者の関心は低く、投票率が過去最低の3割程度に下がるとの見方も出ている。
香港政府は白票を投じるなどの抗議活動を警戒する。すでに白票呼びかけの投稿をインターネット上で転載したとして3人を逮捕した。李氏は「棄権や無効な投票を呼び掛けるのは違法であり、必ず対処する」と述べ、厳しく取り締まる考えを示した。

3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が発足しました。習政権では習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占め、序列24位以内の政治局員でも約7割が該当するとみられます。権力の一極集中を進める習政権の最新ニュースや解説をまとめました。
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