/

北朝鮮、経済疲弊でもミサイル連発 「米の無関心」背景

(更新)
think!多様な観点からニュースを考える

北朝鮮が2週間で4回の弾道ミサイルを発射した。疲弊する経済下で、1回あたり億円単位の費用がかかるミサイルを連発する背景には、バイデン米政権をはじめとする国際社会の無関心がある。この隙に周辺国を脅かす戦術核兵器の実戦配備を進め「核保有国」を既成事実とする狙いだとみられる。

4回の内訳は、韓国の首都ソウルまで1分程度で到達する「極超音速型」と主張するミサイルと、近年開発を急いできた短距離弾道弾が2回ずつだ。14、17両日は列車や平壌の空港から日本海上の無人島を狙い撃ちし、性能を誇ってみせた。

北朝鮮は一連の発射を、5カ年の兵器開発計画にのっとったものだと主張している。

金正恩(キム・ジョンウン)総書記は21年1月の朝鮮労働党大会で、戦術核兵器や大型核弾頭、米首都ワシントンに届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)などを開発すると述べた。なかでも極超音速型は最優先で重要な戦略的意義を持つと位置づけている。

北朝鮮のこうした動きに、国際社会の反応は鈍い。特にバイデン政権は中国やロシアへの対処を優先し、直接の脅威が迫っていない北朝鮮問題は後回しとなっている。

「そんなことはない。北朝鮮のミサイルは同盟国やパートナーにとって危険で、非常に深刻に受け止めている」。18日、米国防総省の記者会見で、北朝鮮問題を「過小評価している」と記者から指摘されたカービー報道官が強く反論する一コマがあった。

バイデン政権は「あらゆる手段」(ブリンケン国務長官)を講じてミサイル開発などに対処すると警告はしている。12日には大量破壊兵器の開発や拡散に関わったとして北朝鮮籍とロシア国籍の計7人に制裁を科したと発表した。

しかし、国際社会の対北朝鮮包囲網づくりはできていない。国連安全保障理事会も足並みが乱れている。新たな制裁どころか、中国やロシアは非難声明にすらあからさまに反対している。

米カーネギー国際平和財団のスザンヌ・ディマジオ上級研究員は「他の優先事項があるバイデン政権が、北朝鮮にどれほど関心を持てるかは分からない。北朝鮮問題が危機的状況に陥る可能性もある」と警鐘を鳴らす。

トランプ前大統領と蜜月関係を築いた安倍晋三政権当時と比べ、対北朝鮮を巡る日本政府の影響力は下がっている。任期満了が近づく韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮との対話を望み続け、批判することにすら及び腰だ。

韓国の情報機関傘下の国家安保戦略研究院は最近の報告書で、北朝鮮の考えを「米中の競争下で国連安保理が追加制裁を決めるのは難しいと判断し、兵器開発に集中している」と分析した。

北朝鮮は北京冬季五輪への不参加を伝える習近平(シー・ジンピン)指導部への書簡で米国の外交ボイコットへの共闘を唱えるなど、したたかに振る舞っている。

奇襲力の高い弾道ミサイルは、実戦配備の段階に入った。変則的な軌道のミサイルを同時に複数撃てば、在韓米軍や韓国軍の迎撃網を突破できる。北朝鮮の立場では、米軍に攻撃をためらわせる抑止力となる。

米国に「非核化は難しい」と認識させることで、先々の米朝交渉を自らに優位なペースで進める思惑もありそうだ。

短距離弾道弾の開発費用は10億ドル(約1100億円)とされる。米政府系の自由アジア放送(RFA)は19年、1発あたりの発射費用が100万~150万ドルに上るとする専門家の見解を伝えたことがある。制裁で外貨は急減したが、指導部は兵器開発に資金を集中投入している。

今後は故金正日総書記の生誕80年(2月16日)、故金日成主席の生誕110年(4月15日)など、内部向けに成果を宣伝すべき記念行事が相次ぐ。3月の韓国大統領選や、11月にある米議会の中間選挙など国際情勢の変化も読みながら挑発は当面続くとの見方が強い。

(ソウル=恩地洋介、ワシントン=坂口幸裕)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • この投稿は現在非表示に設定されています

    (更新)
    (0/300)
(0/300)
投稿内容をご確認ください
投稿チェック項目誤字脱字がないかご確認ください
投稿チェック項目トラブル防止のため、記事で紹介している企業や人物と個人的つながりや利害関係がある場合はその旨をお書き添えください
投稿チェック項目URLを投稿文中に入力する場合は、URLの末尾にスペースか改行を入れてください
詳細は日経のコメントガイドラインをご参照ください

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン