中国、産児制限を撤廃 東北地方で先行実施検討

【北京=川手伊織】中国政府は18日、黒竜江、遼寧、吉林3省などの東北地方で先行して産児制限の撤廃を検討すると発表した。中国では少子高齢化で働き手の人口が減り、潜在成長率を押し下げる要因となっている。将来の社会保障負担を増す要因ともなり、対応が急務となっている。
産児制限の撤廃を巡っては、2020年5月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「まず東北地方で産児制限を撤廃すべきだ」との建議が出されていた。国家衛生健康委員会が18日、建議に答える形で先行実施の検討を表明した。

中国は1980年ごろから一人っ子政策を実施してきたが、2016年にすべての夫婦に2人目の子の出産を認めた。16年こそ出生数が増えたが、17年以降は減少が続く。
出生数を総人口で割った「普通出生率」は19年時点で1.048%と1949年の建国以来、最も低い。出生数と定義は異なるが、戸籍登録ベースでみた20年の新生児も前年を15%下回った。今春にも発表する出生数も減少するとみられる。なかでも東北3省は普通出生率が0.573~0.645%と31の省や直轄市のなかで最低で、深刻な少子化に直面している。
ただ産児制限の撤廃で少子化に歯止めがかかるかは見通せない。国家衛生健康委員会も東北地方は夫婦の出産意欲が高くないとみる。理由として経済的負担や女性の職業安定といった問題が大きいと分析する。
そのため制限撤廃の前提として、東北地方の現地政府が事前に専門家を集め、資源環境や公共サービスなど経済社会に与える影響の分析を撤廃するよう求めた。また撤廃後の人口推計や、子育て支援など必要施策の研究にも取り組むべきだとした。撤廃は検討段階で現時点で具体的なスケジュールは決まっていない。
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