慰安婦訴訟「日韓合意踏まえ協議を」 文大統領が言及
具体策は示さず
【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は18日の記者会見で、慰安婦問題の最終解決をうたう2015年の日韓合意が「政府間の公式合意」だと認めた。日本政府に賠償を命じた元慰安婦訴訟を巡り「合意を土台に解決策を韓日間で協議したい」と述べたが具体案は示さなかった。
ソウル中央地裁は1月8日、日本政府に元慰安婦らへの慰謝料支払いを命じた。日本は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場。国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から控訴もしない方針で、判決は23日午前0時に確定する。
文氏はかねて「日韓合意で慰安婦問題は解決しない」と主張してきた。今回は合意の有効性を認めて日本に配慮したが、文政権内に解決策があるわけではない。むしろ日本政府を相手取った同様の訴訟が韓国内で相次ぎ、収拾がつかずさらなる混乱に陥る可能性がある。
日本は韓国側の出方を見極める。外務省幹部は文氏の発言に「協議よりも、まず韓国側が解決策を示すべきだ」と話した。茂木敏充外相は18日の外交演説で「国際法上も2国間関係上も到底考えられない異常な事態が発生した」と指摘し、韓国に国際法違反の状態を是正するよう求めた。

文氏は日本企業の資産売却が迫る元徴用工訴訟にも触れ「強制執行で資産が現金化される方法は、韓日関係に望ましくない」と述べた。現金化の場合、日本は対抗措置を取る方針だ。最悪の状況は避けたい考えを示したとみられるが、韓国地裁が売却命令を出すのは時間の問題だ。
日韓関係は2018年以降、元徴用工問題や日本の輸出管理対応などで悪化の一途をたどった。慰安婦判決まで加わり、文氏は「正直、困惑している」と漏らした。司法の動きを把握できず振り回されている実情を吐露した格好だが、日本の対応にも「全ての問題を連携させ、他の分野の協力も止めるような態度は賢明ではない」と不満を示した。
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