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北朝鮮コロナ拡大、中国が支援先行 米韓打診には応じず

北朝鮮で新型コロナウイルスの感染が広がり、周辺国が人道的な支援を探っている。北朝鮮は中国の医薬品供給を受け始めたが、ほかの国々の呼びかけには応じていない。米韓は北朝鮮がミサイル発射や核実験を強行する可能性があるとみて慎重姿勢を崩していない。21日の米韓首脳会談でも議題となる見通しだ。

朝鮮中央通信は19日、感染が疑われる新たな発熱者は17日夜以降の1日で約26万2270人だったと伝えた。死者は1人増えて計63人となった。PCR検査などの体制が整っていないため、防疫当局は住民を検診して回り、発熱者を探し出している。

韓国の国家情報院によると、発熱者は学校などの施設に隔離され、熱が下がれば帰宅が許される方式がとられている。北朝鮮では以前から腸チフスなどの感染症が流行しているため、発熱者のすべてがコロナに感染しているとは言い切れないという。

コロナ感染が突然広がった原因は、4月25日の軍創建記念日に実施した軍事パレードだったとの見方が強い。各地から動員された多くの兵士がノーマスクでパレードに臨んだ。16日の朝鮮中央テレビに出演した防疫担当者によると、発熱者は首都平壌の市民が全体の25%に上る。

金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「中国の成果と経験から学ぶのがよい」と語った。ロックダウン(都市封鎖)でウイルスを抑え込み、不足している医薬品については中国の支援に頼る構えだ。

中朝情勢を知る外交筋によると、16日に北朝鮮の高麗航空に所属する輸送機3機が中国遼寧省・瀋陽の空港に到着。医療品を積んで同日中に北朝鮮に戻った。最大150トンの医療物資を運んだもようだ。外交筋は「感染が広がるなか、陸路輸送には制約があり、今後も空路を活用するとみられる」と指摘した。

米政府系の自由アジア放送(RFA)は16日、北朝鮮当局が5月初めに中国製ワクチンを緊急輸入し、中朝境界の警備兵に優先接種していると伝えた。

中国が真っ先に支援に動き出したのは、北朝鮮の戦略的な重要性が相対的に高まっている事情がある。米国に対抗するうえで最も重視してきたロシアが、ウクライナ侵攻で国際的な非難を浴び戦局も泥沼化しているからだ。

中国は貴重な「対米カード」である北朝鮮への影響力を回復させる機会とみなす。中国外務省の汪文斌副報道局長は17日の記者会見で「中国は北朝鮮とともに新型コロナウイルス対策で互いに支持し、協力を強化する」と表明した。

米国の一部や韓国には、新型コロナ支援が北朝鮮の非核化を巡る対話再開の契機になるとの期待がある。もっとも、韓国政府によると米国は北朝鮮側に支援を打診したが返答はないという。

北朝鮮はかねてファイザーなど米国製ワクチンに関心を示していた。バイデン政権は、ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「コバックス」を通じた支援を検討している。

ただ、コロナ感染の急拡大がミサイルや核実験などの挑発行動を自制する理由となる根拠はない。米国務省のプライス報道官は17日の記者会見で「北朝鮮がワクチンの受け取りを拒否し、市民の窮状の改善に全くつながらない核兵器計画に巨額の投資をしていることは皮肉で、悲劇でさえもある」と批判した。

北朝鮮が発熱者や死者を連日公表している理由について、韓国の国家情報院は19日の国会報告で「外部の支援を求めるのが目的ではない」と説明した。指導部が状況を管理統制していると内部に示し、市民を落ち着かせるのが狙いだという。

(ソウル=恩地洋介、北京=羽田野主、ワシントン=中村亮)

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