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マレーシア与党連合、首相候補の一本化で調整 

【シンガポール=中野貴司】マレーシアの与党連合は18日、ムヒディン前政権で副首相を務めたイスマイルサブリ・ヤーコブ氏を首相候補とする方向で調整に入った。与党連合に加わる各党が一本化で合意すれば、首相を決める連邦議会下院(定数222議席)の過半数を確保する見通しだ。

マレーシア王室は18日、アブドラ国王が20日に各州の州王を集めた会議を開くと発表した。国王は18日午後までに全下院議員に意中の首相候補の名前を提出することも求めており、20日に州王の意見を聞いた上で新首相を任命する見通しだ。

地元メディアによると、下院で38議席を持つ統一マレー国民組織(UMNO)は17日に最高評議会を開き、同党所属のイスマイルサブリ氏を首相候補とする方針を決めた。UMNO内にはベテランのラザレイ・ハムザ元財務相らを推す声もあったが、機関決定によって党内の意思統一をはかったことで、イスマイルサブリ氏は次期首相の就任に向け大きく前進した。

ムヒディン前首相が16日に辞任に追い込まれる引き金となったのは、与党連合で最も議席を持つUMNOが7月に連立政権から離脱すると表明したことだった。UMNO内もザヒド総裁らの離脱派と、閣内にとどまるイスマイルサブリ氏ら残留派に二分され、事実上分裂状態に陥っていた。

そのUMNOが首相候補を一本化したのは、内紛が続けば野党に首相の座を奪われるとの危機感からだった。汚職事件で起訴されているザヒド総裁が自ら首相候補になるのは難しいという事情もあった。ムヒディン氏が率いるマレーシア統一プリブミ党(PPBM)など他の与党勢力にとっても、ムヒディン前政権の主要閣僚だったイスマイルサブリ氏の首相就任は受け入れやすい選択肢となる。

仮に国王がイスマイルサブリ氏が過半数の支持を得ていると判断し、次の首相に任命すれば、ムヒディン前政権と同じ連立政権の枠組みが継続することになる。首相ポストを得たUMNOが連立政権内の権力争いをやめれば、当面は政権基盤も安定する見通しだ。一方、野党連合を率いるアンワル元副首相も過半数の獲得を目指し、与党連合の切り崩しに必死だ。

国王は18日の声明で、「国民が際限のない政治の混乱に苦しむことがあってはならない」として、誰が首相に就いても「全ての政党が協力すべきだ」と訴えた。マレーシアは新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、早期の解散・総選挙の実施は難しい情勢だ。新政権は新型コロナ危機への対処が最優先課題の暫定政権との位置づけが強い。今後感染者数が減り、ワクチンの接種率も高まれば、野党や国民から解散・総選挙を求める声が高まりそうだ。

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