ブリンケン国務長官「ワクチン供給、政治と分離を」
会見一問一答

米国のブリンケン国務長官は17日、日本のメディア向けにオンラインで記者会見を開いた。主なやりとりは以下の通り。
新型コロナウイルス
――中国が進めている途上国向けの新型コロナウイルスワクチン供給、いわゆる「ワクチン外交」をどう見るか。
「世界の大部分の人々がワクチンを接種するまで完全に安全な状態ではない。ワクチンを接種できていない国が経済的に苦しみ続ければ、私たちにも影響は及ぶ。中国などはワクチン外交を展開している。もちろんより多くのワクチンが世界に行き渡るほうがいいに決まっているが(ワクチン外交には)裏もありえる。ワクチン供給を政治や地政学と結びつけるべきではない。人類全体の利益のために実施すべきだ」
――日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国が連携する「Quad(クアッド)」によるワクチン供給の枠組みを他国に広げる考えはあるか。
「クアッドのワクチン供与の枠組みは始まったばかりで、完全に軌道に乗るまでは時間がかかるだろう。米国などではワクチン生産が劇的に増加しており、より多くの人々がワクチン接種を受けている。最もよいやり方を共有し、学び合うことを願っている。(ワクチン供給枠組みの拡大については)まずクアッドの枠組みを軌道に乗せてから状況を確認したい。どんなことが可能なのか調整しなければならない。状況は刻々と変化している」
東京五輪・パラリンピック
――東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長が女性を蔑視した発言で辞任した。
「バイデン米大統領は、多様性が米国の最大の強みだと信じている。国務省をはじめ、さまざまな政府機関の上級職には多様性を反映した人材が就いている。大統領は上院議員の時に女性への暴力防止法(VAWA)成立を主導した。キャリアの中で誇りに思っていることを聞けば、大統領は同法の成立を挙げるだろう。ジェンダー平等を含めて真に包括的で多様性を反映した政府を作らなければならない」
――東京五輪・パラリンピックの開催について米国はどう考えているか。
「東京五輪・パラリンピックについては日本政府の考えを支持する。具体的には日本オリンピック委員会、国際オリンピック委員会が重要な役割を担っており、それぞれの意見も参考にしたいと考えている。いずれにせよ、私たちは日本政府の決定を支持する」
核軍縮
――新戦略兵器削減条約(新START)延長時に、国務長官は核軍縮に向けた努力の重要性について言及していた。世界最大級の核保有国である米国はどう取り組むか。
「抑止力や防衛力を維持しながら、どのように核兵器への依存度を下げられるかを検討していく。核兵器削減の取り組みで米国は主導的な役割を担う。バイデン政権は今後数カ月の間に核体制の見直し(NPR)を実施する予定だ」
外交・防衛
――民主主義と比べて、権威主義が持つ強みは何か。
「非常に重要な問いだ。現在、権威主義国家は国民が必要とするものを提供するには権威主義国家のほうがより効果的だと主張しようとしている。民主主義国家は能力に欠けると示そうとしているのだ。米国と日本は共に立ち上がり、民主主義こそが最善の道だと世界に示す必要がある」
――日米が16日の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)でまとめた成果文書では、日本が国防および同盟の強化に向け、能力を向上させる決意を表明したとある。
「自国を守り、お互いを守るための手段を確保するには、当然ながら現実的な負担がともなう。現在のような非常に複雑な状況では安全保障に多くのコストがかかり、誰もが多少の負担を強いられる。私たちにはパートナーシップの精神があり、協力することができる」
――日米は中国について深刻な懸念を示した。昨今の中国の行いにバイデン政権はどう対応していくか。
「中国は尖閣諸島を含む東シナ海、南シナ海、台湾で攻撃的に行動している。罰せられることなく好き勝手に振る舞えると中国が思わないように明確にする。中国の行いについて私たちは日本と懸念を共有し、日本と共にある。尖閣諸島には(米国の日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条が適用される」
「(18日には)中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相らと会談する予定だ。私たちが中国の行動について抱いている懸念を明確な言葉で提示したい」
――日米韓3カ国の協力関係はどのように機能するか。
「北朝鮮の核・ミサイル開発、人権侵害などの問題で、3カ国は共通の関心を持つ。日米韓が協力関係を築くことが互いの利益になる」