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シンガポール、電力小売り2社が撤退 調達価格の高騰影響

【シンガポール=中野貴司】シンガポールの電力小売企業が相次ぎ事業撤退に追い込まれている。世界的なエネルギー価格の高騰によって収益環境が急速に悪化しているためだ。事業を続ける小売企業も今後電気料金を引き上げる可能性があり、中国や欧州で深刻化する電力危機が、東南アジアにも飛び火してきた。

「過去数カ月の電力市場の急激な変動によって、標準的な電気料金より低い価格を提供することが困難になりました」。独立系のオーム・エナジーは15日付で小売事業から撤退したと発表した。同じ独立系のアイスイッチも自社のホームページで、11月11日付で小売業務を停止すると明らかにした。

シンガポールは2018年11月に家庭向け電力小売市場の自由化に踏み切り、オーム・エナジー、アイスイッチを含む12社が参入した。政府系のシンガポール・パワーよりも割安な価格プランを導入し、これまでに約140万世帯の半数が電力の購入先を切り替えていた。

ただ、天然ガスなどエネルギー価格の高騰によって電気の調達価格が上昇し、価格変動リスクを十分にヘッジ(回避)していなかった企業の収益はここにきて急速に悪化している。消費者には契約期間中、割安な固定価格で電力を提供する契約を結んでいるため、調達価格が小売価格を上回る「逆ざや」に陥っているもようだ。

地元紙によると、撤退を表明した2社とは別の2社も新規の契約受け付けを止めており、撤退企業がさらに増える可能性がある。

撤退した2社の契約はシンガポール・パワーに移管される。エネルギー市場監督庁(EMA)は16日に発表した声明で、円滑な移管を保証すると約束するとともに、電力の供給が滞ることはないと強調した。今後もエネルギー価格の大幅な変動が続く事態に備えて、小売企業にリスク回避手段の活用を働きかける。

小売り各社は新規契約については値上げを進めており、標準的な電気料金との価格差は縮小している。エネルギー価格の高騰が続けば、既存の契約も更新の際に値上げする見通しで、消費者の負担は増す。電力小売り自由化は新規参入によって競争を促進し、消費者の選択肢を広げる目的だったが、相次ぐ撤退や価格差の縮小で恩恵が見えにくくなっている。

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