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香港議会選、低投票率が示す「民意」 議席99%が親中派

(更新)

【香港=木原雄士】19日投票の香港立法会(議会、定数90)選挙は20日、開票が終了し、親中派が99%にあたる89議席を得た。中国が選挙制度を見直して、事実上民主派を排除。議会は親中派一色になり、政府は統制強化の政策を進めやすくなる。投票率は過去最低に落ち込んだものの、中国政府は「香港の民主制度の新たな一歩」と正当化した。

「自由な選挙を装っているだけの偽物選挙。支持できる候補者は一人もいない」。会社員の男性(25)は「時間を無駄にしたくない」として棄権した。

今回は習近平(シー・ジンピン)指導部が「愛国者による香港統治」を掲げて見直した新制度のもとで、初めての選挙となった。投票率は30.2%と前回2016年選挙の58%を大幅に下回った。

定数90議席のうち40議席は親中派で構成する選挙委員会が選び、30議席は多くが中国に近い業界枠。一般市民の投票で決まるのはわずか20議席だけだ。しかも親中派からの推薦を得て、当局に「愛国者」と認定されなければ立候補できない。

民主派政党は候補者の擁立を見送り、自ら親中派でないと主張する「自称民主派」は全敗した。

立教大の倉田徹教授は「候補者が審査され、結果が事前に分かる中国式選挙だった」と話す。複数の候補者は日本経済新聞の取材に、中国政府の関係者とみられる人物から繰り返し出馬の意向を尋ねられたり、立候補する選挙区を誘導されたりしたと証言した。中国が選挙の「競争」を演出した可能性がある。

香港のテレビ局アイケーブルの調査によると、投票所に足を運んだ有権者のうち30代以下は10%。自由で民主的な教育を受け、19年のデモを主導した若者の多くは棄権した。香港紙・明報の調査では棄権した人の43%は「選挙制度に不満」、40%は「適切な候補者がいない」と回答した。

「私の候補者を釈放して」。投票日の19日、活動家らのSNS(交流サイト)で呼びかけが広がった。選挙制度見直し前、立法会選に出馬意思を表明した民主派47人は国家政権転覆罪で起訴され、いまも出馬禁止か収監されたままだ。

香港の選挙制度はもともと親中派に有利な仕組みだったが、市民のデモや民主派の抵抗によって統制強化や愛国教育を阻んできた。今回の選挙で議会から「抵抗勢力」が消え、こうした政策を進めやすくなる。

中国政府は20日、香港の一国二制度に関する白書を公表し「新しい選挙制度はさまざまな背景を持つ人をひき付け、多様で前例のないものだ。決して単一の声ではない」と主張した。倉田氏は「米国の民主主義サミットに対抗し、香港がうまくいっているという勝利宣言だ」とみる。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は20~23日に北京を訪問する。習氏と会談し、選挙の正当性のお墨付きを得るとみられる。

米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国の外相は20日、立法会選を受けて「香港の選挙制度の民主的な要素の侵害に深刻な懸念を表明する」との共同声明を発表した。「選挙制度の見直しによって、政治的な反対意見が封じられた」と指摘。言論の自由の制限など市民社会の締め付けにも懸念を示し、中国に香港で権利や自由を尊重する国際的な義務を果たすよう求めた。

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