香港人口、3年連続減少 22年末733万人 海外流出続く

【香港=木原雄士】香港政府は16日、2022年末の人口が733万3200人となり、1年前と比べて6万8300人(0.9%)減ったと発表した。人口減少は3年連続。出生数が死亡数を下回る自然減に加え、海外への純流出は6万人だった。政府は今後、新たなビザ(査証)制度などを通じて年3万5000人の人材誘致をめざす。
人口変動の内訳は自然減が2万9500人、中国本土からの移住による増加分が2万1200人、海外への流出から香港への流入を差し引いた純流出は6万人だった。
20年の香港国家安全維持法(国安法)施行による愛国教育や、厳格な新型コロナウイルス対策を嫌い、海外移住が続いたとみられる。
香港の人口は02〜03年の一時期を除いて増え続けていたが、20年に減り始めた。目立つのは出生減と海外移住だ。22年の出生数は3万2500人で、19年の5万2900人から4割近く減った。政府には海外移住の統計がないものの、一時的な移動を含めた人口の流出超過が止まらない。
英国政府はこのほど、21年に始めた香港市民向けの移住制度で14万4500人を受け入れたと発表した。英国海外市民(BNO)パスポートを持つ香港人に就労を認め、将来的には永住権の取得を可能にする内容だ。教育環境を重視する子育て世帯の移住が目立つ。カナダ、オーストラリア、シンガポールなども有力な転出先となっている。
IT(情報技術)や金融の業界では人材不足が深刻だ。人材コンサルティング会社モーガン・マッキンリーのロバート・シェフィールド氏は「香港に来る海外人材が減り続ける中で香港を離れる人が増え、人材不足につながっている」と話す。
香港政府は22年、専門人材を呼び込むため年収250万香港ドル(約4300万円)以上か世界トップ100大学を卒業した人を対象に新たなビザ制度を創設した。22年末の受け付け開始から2カ月弱で1万人を超える申請があったといい、人材獲得に自信を示す。だが、直近の3年で労働力人口は18万人減り、人手不足の解消にはほど遠い。
一方、新型コロナ対策が緩和され、海外との往来が正常化したため、人の流れが活発になるという期待もある。香港政府の報道官は「22年下期の人口減少は上期に比べて縮小した。人材流入に影響していた各種の要因は徐々になくなるだろう」と指摘した。
人材紹介会社マイケル・ペイジのマーク・ティバッツ氏も「22年は人材の大量流出が見られたものの、新型コロナ規制の緩和で人材の流入が徐々に増えるだろう」との見方を示す。