ニュージーランド人を人質 パプア島独立勢力

【ジャカルタ=地曳航也】インドネシアの東部、ニューギニア(パプア)島で、ニュージーランド(NZ)人のパイロットがパプア地域の分離独立を訴える武装勢力に誘拐され、人質になっている。犯行グループは16日までにパイロット本人とみられる動画を地元の警察やメディアなどに送り、SNS(交流サイト)で拡散している。
インドネシア国家警察などによると、乗員乗客6人を乗せた民間航空会社スシ・エアーの小型機が7日、山岳パプア州の空港に着陸した後、滑走路で武装勢力に襲われた。武装勢力は当初6人全員を拘束し、パプア地域の現地住民だったパイロット以外の5人を解放した。パイロットはNZ人のフィリップ・メーテンズ氏とみられる。
パプア地域のインドネシアからの分離独立を掲げる「西パプア民族解放軍(TPNPB)」が犯行声明を発表した。関係者に送った動画では、山間部で銃や弓を持った集団に囲まれたメーテンズ氏とみられる人物が、インドネシア語と英語で「インドネシアはパプアの独立を認めなければならない」と訴えている。
TPNPBはインドネシア政府に独立を容認しない限り解放しないと主張している。マフッド調整相(政治・法務・治安担当)は15日、記者団に犯行グループと交渉を進めると強調しつつ、「他の手段も排除しない」と強攻策も示唆した。国家警察は16日、日本経済新聞の取材に国軍と合同の交渉団を現地に派遣したと表明した。
ニューギニア島は西半分がインドネシア領、東半分が独立国のパプアニューギニアからなる。インドネシア領のパプア地域では分離独立を求める勢力が一部武装化し、たびたび襲撃事件を起こしている。TPNPBは強硬派として知られ、国家警察によると、今回の犯行グループは2017年から23年までに46人を殺害したという。