インド、夏までに3億人 ワクチン接種スタート

【ニューデリー=馬場燃】インド政府は16日、新型コロナウイルスのワクチン接種を開始した。モディ首相は同日のビデオ演説で「世界最大のワクチン接種が始まった」と語り、夏ごろまでに約3億人への接種を予定する。全世界の累計死者数が15日に200万人を超すなどなお感染拡大に歯止めがかからない中、13億人強の人口大国のインドがワクチンの円滑な接種を成功させられるのか、注目を集めている。
インド政府は1月初めに2つのワクチンの利用を承認した。一つは英オックスフォード大と英製薬大手アストラゼネカが共同で開発し、印セラム・インスティチュート・オブ・インディアが製造した「コビシールド」。もう一つは印バーラト・バイオテックの国産第1号のワクチン「コバクシン」。初日の接種は両ワクチンあわせて約3000カ所の会場で約30万人を対象とした。
まずは医療関係者や警官が接種し、次に高齢者や高血圧などの患者に広げる。モディ氏は「インドは短期間で2つの国産ワクチンをつくり、ほかのワクチンよりもはるかに安い」と胸を張った。2つのワクチンの単価は約200ルピー(約280円)とされており、近隣国のネパールなどへの輸出も計画している。
インドは貧困層を中心にコロナ感染が広がり、足元で累計感染者は1050万人強にのぼる。感染者は米国に次ぐ世界で2番目の高い水準だ。直近の新規感染者は1万~2万人に落ち着いたが、コロナ拡大の影響で経済活動の正常化が遅れている。インドの中央銀行は2020年度の経済成長率をマイナス7.5%と過去最悪を見込んでおり、コロナ感染拡大の防止が急務だ。

インドは低温輸送の物流網が発達していないため、適切な温度管理を施したワクチンを運べるかどうか懸念する声も出ている。世界では英国や米国などがワクチンの接種をすでに始めたが、インドの国産ワクチンは十分な検査データがそろっていないなかで承認されたとの批判もある。