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中国中小銀行に不安 地銀で取り付け騒ぎ、農村銀行破綻

【北京=川手伊織】中国で中小銀行の経営への不安が強まっている。今春、小規模な地域金融機関で預金が引き出せなくなった問題は、地方銀行大手の取り付け騒ぎに発展した。農村部を基盤とする2行の破綻も明らかになった。政府は地域発の金融不安が全国に広がりかねないと警戒する。不良債権処理の加速や公的資金の注入で中小銀行の経営健全化を急ぐ。

中国の中小銀行は日本の地銀に相当する都市商業銀行、農業協同組合に似た農村商業銀行、農村部に基盤を持つ村鎮銀行などがある。銀行数では全体の9割を占めるが、総資産は全体の3割弱にすぎない。

中小銀行への警戒感が強まったのは、河南省や安徽省の村鎮銀行で4月下旬から預金を引き出せなくなったためだ。投資グループを通じて銀行を実質支配していた犯罪集団が資金を不正流出させていた疑いがある。預金引き出しを求める抗議活動が広がり、社会問題となった。

政府は現時点で50万元(約1000万円)を上限に、預金の払い戻しを肩代わりしている。混乱の収束を狙ったが、上場地銀大手の南京銀行での取り付け騒ぎに発展した。問題の村鎮銀行が南京銀行の決済システムを使っていたことがきっかけだ。同行にも資金リスクが及びかねないと懸念した預金者らが9月初旬、一部店舗に詰めかけた。

銀行の破綻も発生した。中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は8月、遼陽農村商業銀行と遼寧太子河村鎮銀行が破綻手続きに入るのを認めた。当局は「違法な経営で地方の金融秩序を破壊した」と指摘した。乱脈経営などを問題視しているとみられ、別の地元銀行が事業を引き継ぐ。

中小銀行の多くが拠点を構える農村部や小都市は人口流出が続いている。そのうえ、新型コロナウイルスの感染を抑えるための厳しい移動制限や不動産市場の低迷が重なり、地域経済は疲弊している。

銀保監会などが2021年、営業拠点外の顧客からの預金受け入れを禁止したことも中小銀行の打撃となった。経営体力が弱い中小銀行が域外にも預金者を抱えると、経営難に陥ったときに金融不安が全国に広がりかねない。禁止措置は金融リスクを減らすが、営業エリアが小さい村鎮銀行などは資金集めの有力な手段を失った。

政府は中小銀行の経営健全化を急ぐ。中小銀行が金融当局の指導のもと、1~6月に処理した不良資産は6700億元に上った。前年同期より32%多かった。大手行も含めた全体の処理額も年々増えているが、その増加率(18%)を上回った。

銀保監会や中国人民銀行(中央銀行)はさらに、6省を「不良債権処理加速地域」に指定する。具体的な地域は未公表だが、政府関係者は「取り付け騒ぎが広がった河南省のほか、東北地方の省や村鎮銀行が多い省が対象になる」と語る。

公的資本の注入で将来リスクにも備える。3200億元のインフラ債を転用する。20~21年に投じた2100億元に続く第2弾となる。中国財政省は21年夏「インフラ債を使った公的資金の注入は(第1弾の)一度限り」と表明したが、中小銀行のリスクが再び高まり、方針転換した。

中国共産党は22年中に、金融行政の方向性を示す全国金融工作会議を開く予定だ。5年に1度の開催で今回が6回目となる。1997年の第1回以外はいずれも党大会前に開き、国有銀行改革や資産バブルの抑制など重要政策の方針を固めた。

中国の証券会社、東呉証券は「全国金融工作会議の開催は党大会後となる可能性が高い」と指摘する。そのうえで「新たな金融行政の方向性をめぐる不確実性が高まる」と懸念。全体方針が定まらないと、新たな取り付け騒ぎなどをきっかけに中小銀行に対する社会不安が一段と膨らむ恐れもある。

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