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マレーシア首相辞任 連立政権1年半で崩壊 

【シンガポール=中野貴司】マレーシア王室は16日、アブドラ国王がムヒディン首相から辞表を受け取り、辞任に同意したと発表した。ムヒディン内閣は16日付で総辞職した。閣僚や与党議員の相次ぐ連立政権からの離脱表明で連邦議会下院の過半数を割り込むことが確実になり、政権維持が困難になった。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、2020年3月に発足した連立政権は約1年半で崩壊した。

アブドラ国王は16日、次の首相が決まるまでムヒディン氏を暫定首相として、引き続き職務にあたらせることも決めた。ムヒディン氏は16日のテレビ演説で「私は議会の過半数の支持を失った」と述べ、憲法の規定に従い辞任すると表明した。

後任の首相候補にはイスマイルサブリ・ヤーコブ副首相らの名が挙がっている。野党勢力はアンワル元副首相を首相候補としているが、現時点で首相を決める下院の過半数の支持を得ている候補はいないとみられる。マレーシア憲法は「国王が下院議員の過半数の信任を得ていると判断した議員を首相に任命する」と定めており、今後政党間の多数派工作が激しくなる見通しだ。

ムヒディン政権を巡っては、7月に与党連合の一角を占める有力政党の統一マレー国民組織(UMNO)が政権離脱を発表し、危機が表面化した。アンワル氏ら野党からの辞任要求も日増しに強まっていたほか、これまで続投を容認してきたアブドラ国王との溝も深まっていた。ムヒディン氏は13日のテレビ演説で議会改革などを約束し、野党に協力を呼びかけた。ただ、野党は応じず、打つ手がなくなっていた。

ムヒディン連立政権は、20年2月に首相を突然辞任したマハティール氏とたもとを分かったムヒディン氏が、ナジブ元首相らが参加する当時野党のUMNOと組んで発足した。総選挙を経ないまま、巨額の汚職事件で起訴されているナジブ氏らと連立政権をつくったことへの批判は当初から強く、ムヒディン氏は薄氷の政権運営を強いられてきた。

首相候補に挙がるイスマイルサブリ氏はUMNOに所属し、同党が政権離脱を表明した後も閣内に残り、ムヒディン氏を副首相として支えてきた。首相ポストの獲得を目指しているUMNOがイスマイルサブリ氏への一本化でまとまれば、ムヒディン氏が率いるマレーシア統一プリブミ党(PPBM)などの議席と合わせ、過半数を確保できる公算が大きい。

ただ、UMNOのザヒド総裁やナジブ氏らのグループがイスマイルサブリ氏の擁立に同意しない可能性もあり、次の首相がすぐに決まるかは予断を許さない。マハティール氏が20年2月に首相を辞任した際も、アブドラ国王がムヒディン氏を首相に任命するまで数日間を要した。

マレーシアは1日あたりの新型コロナの新規感染者数が2万人程度と高止まりしており、人口あたりの新規感染者数では東南アジアで最悪の状況にある。新政権発足までの期間が長引き政治の空白が生じれば、逼迫する医療体制の改善などが遅れる懸念がある。

新型コロナ危機に政治の危機が加わり、マレーシア経済の回復は遅れている。マレーシアは電気製品・部品をはじめ工業品の輸出が多く、周辺国のサプライチェーン(供給網)にも悪影響が広がる可能性がある。

ムヒディン氏は政権延命のために、自らに近い人物に下院議長を差し替えたり、国会の開会を先延ばししようとしたりしてきた。議会制民主主義のルールを軽視する行為を受け、本来は内閣の助言に基づいて行動するアブドラ国王が国政に介入するなど、異例の状態が続いてきた。

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