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バイデン政権、中東同盟見直し サウジなど警戒強める

 ブリンケン米国務長官=UPI・共同

【ドバイ=岐部秀光、ワシントン=中村亮】バイデン米政権が中東における同盟関係の見直しを進めている。アラブ首長国連邦(UAE)への戦闘機売却を凍結したほか、サウジアラビアと敵対するイエメンの武装組織のテロ組織指定も解除する。トランプ前政権からの急激な政策転換にサウジなどは警戒を強めており、中東の秩序が揺さぶられる可能性もある。

米国務省は16日、イエメン内戦で同国の反体制武装勢力「フーシ」のテロ組織指定を解除する。ブリンケン国務長官はテロ指定でイエメンの食料や燃料の調達に壊滅的な打撃がありうると指摘。「この決断はイエメンの差し迫った人道状況を認識したものだ」と強調し、外交政策で人権を重視する立場を鮮明にした。

フーシはイランを後ろ盾とするイスラム教シーア派の武装組織だ。イエメンの首都サヌアを占拠し、サウジが支援する暫定政権との戦いを続けている。オバマ政権時代に始まった内戦は7年目に突入。経済崩壊で疫病がまん延し、人々は「世界最悪の飢餓の危機」(国連のグテレス事務総長)に直面している。

イランを敵視したトランプ前政権は1月にフーシをテロ組織に指定し、サウジへの肩入れを鮮明にしていた。しかしバイデン大統領は4日の演説で「われわれは武器の売却をふくむイエメン攻撃作戦への支援をすべて終わらせる」と述べ、サウジへの武器支援の見直しを明言した。民主党はリベラル派の代表格であるサンダース上院議員を中心にイエメンの人道危機の責任はサウジにあると強く批判しており、バイデン政権は対応を迫られていた。

トランプ前政権は対イラン政策での協調を優先してサウジの外交にほとんど口をはさむことがなかった。バイデン政権による政策転換に、サウジ政府は大きな衝撃を受けている。サウジは10日、著名な女性人権活動家ルジャイン・ハスルル氏を1001日ぶりに拘束から解放した。女性の自動車運転解禁などを求めていたハスルル氏の長期拘束について、国際人権団体などの批判に配慮したとみられる。

サウジの実力者ムハンマド皇太子は経済の自由化や社会の近代化など、国家の大改造を進めているが、政治の民主化にはほとんど手をつけていない。自身の方針に異を唱える政敵を次々と排除。女性の自動車運転解禁をみずからの指導力の成果と演出する一方、「下からの改革」には容赦しないきびしい対応をみせてきた。

バイデン氏は野党時代、皇太子の関与疑惑があるサウジ政府批判の著名記者が殺害された事件を念頭に、サウジを「パーリア(嫌われ者)」という強い言葉で批判した。トランプ時代の反動もあり、米議会内の反サウジ意識も再燃しており、サウジは厳しい局面に立たされている。

警戒を強めるのはサウジだけでない。バイデン政権はUAEへの最新鋭のステルス戦闘機F35の売却手続きを凍結する方針を出している。

F35売却はUAEがイスラエルとの国交正常化に踏み切ったことの「見返り」とみられていた。バイデン氏は、トランプ前政権がUAEに課したアルミニウムへの追加関税を維持することも決めており、一気に逆風がふき始めている。

イスラエルのネタニヤフ首相は、トランプ前大統領やその娘婿で大統領顧問を務めていたクシュナー氏との個人的なつながりという対米関係の強みを失い、国内外で立場が弱まる。バイデン政権はパレスチナ向けの支援を再開する方針で、過度な親イスラエル政策の修正を図る。

中東におけるバイデン政権の人権外交は昔ながらのジレンマに直面する。米国がサウジなどの同盟国から距離をとれば、その空白を埋めるのは、中国やロシアといった国々だ。親米国の強権指導者が影響力を弱めると、過激なイスラム主義者が権力を握りかねない。

6月に大統領選挙が控えるイランをめぐっては、崩壊寸前の核合意修復の交渉も取り沙汰される。新たな合意づくりでは、サウジやイスラエルの理解を得ることも欠かせない。米の中東外交の修正は慎重なかじ取りが求められる。

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